イギリスご訪問で“本格的な復活”

 そして社会が次第にウィズコロナに舵を切ったところで、天皇と皇后も次第に外出をともなう公務を再開していくことになる。そして、夫婦ともに公務に取り組む姿を私たちは報道などで見、そして天皇と皇后の姿を認識していく。

 東京都内の様々な式典への出席とそこでの「おことば」が、まず外出をともなう公務の復活の第一歩であった。

 しかし、本格的な復活は期せずして訪れた。イギリスのエリザベス女王の死去にともなう葬儀への出席である。コロナ禍にあって、天皇と皇后の東京都外への外出はなかった。また、宿泊をともなう外出の経験もなかった。ましてや、国外に訪問するということもなくなっていた。コロナに感染する危険性も想定された。そうした状況のなかで、天皇と皇后は葬儀に出席するために9月17日から20日にかけてイギリスを訪問することになったのである。これは異例中の異例という出来事(そもそも、天皇が外国の君主の葬儀に出席したのは過去に一例しかない)であり、それに対する決定はまさに決断だったと言える。

 

雅子さまのアドバイスで天皇陛下が助けられる場面も

 雅子皇后は葬儀前日のチャールズ国王主催レセプションには翌日に備えて欠席した(天皇1人が出席)ものの、エリザベス女王の葬儀には天皇とともに参列した。その後、外務・英連邦・開発相主催レセプションの際に、エリザベス女王を追悼して弔問の記帳を天皇と皇后はしたが、この様子が写真や映像で紹介された。天皇が記帳する際、あたたかくその様子を見守る皇后の姿。映像を見ると、英語と日本語で書いた方がよいのではないかと天皇に伝える皇后の様子、そしてそうした皇后の話を素直に聞く天皇の姿も見て取れる。

 また、現地の邦人が、ホテルを立ち去る際の2人の様子を映した動画をTwitterに投稿していたが、その様子も興味深い。ホテルを出た天皇はすぐに車に乗ろうとした。ところが皇后はそうした天皇に呼びかけ、ホテルの職員に声を掛けるように伝えた。結果、天皇は車には乗らずにホテル出口で職員に感謝の声を掛けるなど会話をしている。つまり、皇后のアドバイスによって天皇が助けられているのである。天皇と皇后のそうした様子は極めて自然で、普段からそうした関係性ではないかと想像される。おそらく天皇は皇后を信頼しているのだろう。また、皇后がまわりを見、状況を判断している時もあるのではないか。

2022.12.17(土)
文=河西 秀哉