当たり前にいいものが、日常のパートナーとなる喜び
1970年代までのボルボ車はつまらない、と冒頭に書きましたが、ひとつ、すばらしい魅力があったのを、私は思い出しました。シートです。フリッツ・ヘニングセンやカーレ・クリントといった高級家具メーカーのソファのような座り心地のよさなのです。
コイルスプリングにパームロックという馬の毛とヤシの繊維で編んだマットを組み合わせていたのでしょう。いまからすると凝ったつくりだけれど、きっと当時のボルボの担当者は、当たり前のことをやったにすぎない、と言ったはずです。当たり前にいいもの。ボルボの製品づくりの思想は、いまも健在なのでしょう。
ボルボカーズのジム・ローワンCEOは、「このクルマはサステナブルなファミリーライフスタイルにとって、完璧なパートナーになるでしょう」と話しています。
人間をサポートするという安全思想
EX90は満充電で600キロの航続距離を誇り、路上での事故を回避するために最新の安全システムを装備していると謳われます。
同時に、車内に乳幼児やペットが置き去りにされるのを防ぐため、最新のセンサーを装備。安全技術を担当するボルボカーズの役員によると「睡眠中の赤ちゃんの、毛布の下のかすかな動きも、センサーがとらえて、もしそのまま車外からドアロックしようとすると警告がでます」とのこと。
もうひとつ、さすがと思わされるのが、大きなバッテリーを搭載している強みを活かしていること。仮に生命のあるものが車内に取り残されてしまった場合、車内温度が一定以上になったのをクルマが感知すると、自動でエアコンを作動させます。
「ボルボの基本的な考えは、人間中心のクルマづくり。人間はなんかの拍子に過ちをおかしてしまうもの。それを車両がいかにカバーしていくか。EX90の最新技術の数々は、同様のコンセプトに基づいて開発されています」(広報担当者)
EX90のボディサイズなどはまだ好評されていません。3列シートの7人乗りで、私が3列目のシート(作りがいい!)を試したところ、予想以上にスペースがあって居心地がよかったので、車体全長は5メートル前後でしょう。
ファミリーが多いひとには、これでいいでしょう。もっと手頃なサイズがいいという人のために、ボルボでは現在「C40」と「XC40」という電動SUVを販売しています。
EX90の生産が立ち上がるのは2023年、日本には24年以降の導入になりそうです。
ボルボ・カー・ジャパン
2022.12.04(日)
文=小川フミオ