ボルボというスウェーデンのクルマをご存知でしょうか。1927年創業という長い歴史をもち、人間中心を謳う製品づくりで世界中にファンを持ちます。最新モデルはピュア電気自動車。さきごろストックホルムで発表されました。
私は自動車の記事をよく書いていますが、いま個人で乗っているのも、ボルボです。1970年代までのボルボ車は乗ってて退屈でしたが、いまは楽しさを感じさせます。
ボルボの魅力のひとつが、インテリアの仕上げ。ほかのどんなメーカーのクルマとも違う趣味性があって、白木の家具をはじめ北欧のインテリアが好きな人にはとくにビビッと響くようです。
数多くある自動車メーカーのなかで、年間生産台数17万台ほどのボルボ(トヨタは857万台)が存在感を失っていないのは、自分たちの個性をしっかり守っているからのようです。
現代におけるラグジュアリーを問い直す
「現代においてラグジュアリーとは何か?」。ボルボのデザイナーたちは、そんな問いかけを持ちながら、今回の「ボルボEX90」に取り組んできたといいます。
ひとつは電気自動車であること。2030年には販売するクルマのすべてを電動にすることがボルボの目標といいます。
もうひとつは、環境へのインパクトを抑えること。このEX90の工場は、あらゆる種類の温室効果ガスを排出しない「クライメートニュートラル」を目指すと発表されています。
さらに、あらゆる世代に響きそうなのが、居心地のよさそうなインテリアです。
「私たちにとって、きらびやかであることがベストではありません。また、新しい本革の香りだけが、高価なインテリアの証ではなくなりました」
ボルボで、内装の仕上げを担当するシニアデザインマネージャーのセシリア・スターク氏は、EX90の発表のタイミングで、現地で出合った私に、語ってくれました。
「私たちは、目立てばいいとか、斬新であればいいとか、そんな価値観は持ち合わせていません。EX90は、私たちにとって初めてゼロから専用に開発した電気自動車ですが、従来からの特徴を捨てていません」
浜辺に漂着した木のように自然にツヤがなくなった美しさを再現した「ドリフトウッド」なるウッドパネルだったり、淡いグレーやベージュの色使いだったり。EX90では本革などを排したアニマルフリーの考えを採り入れていて、ウール混や手ざわりのいい合成皮革がシート地に使われています。
2022.12.04(日)
文=小川フミオ