「百貨店の企画で展示されることもありますが、主に見てもらう場はSNSですね。Cityscape Studioが独立してやっていく上では、模型や部品の販売と並んで、YouTubeでの収益も大きな柱となっています」

ジオラマ作りの背景には“あのゲーム”

 模型といえば、アナログ趣味の王様である。テレビゲームが流行るよりも昔から、戦車やロボットのプラモ作りは子どもたちの娯楽であった。

 MAJIRI氏も、自身の手で組み立て作業を行っており、完成したジオラマはれっきとした“アナログ作品”だ。しかし彼の作品には、デジタルの英知が詰まっている。

 

「Google Earthを使えば、土地の標高や、建物の高さといったデータも手に入ります。それをパソコンでCADのデータ(3次元化された図面)に起こして、設計図を書くところから始めています。そもそも、どの町を作るかという時点で、Googleのストリートビューを見て決めていますね」

 造形のリアルさとは裏腹に、実地への取材はほとんどせず、Googleから入手できる客観的なデータから作り上げるというMAJIRI氏。製作者の主観が入り込む余地がないからこそ、作品を見る側が、その町についてのことを、めいめい勝手な言葉で語りたくなる。この“語りたくなる”魅力が、SNSで支持を集める大きな理由だろう。

 また、YouTubeにアップロードされている製作工程の動画を見ると、勘に頼るフリーハンドの作業がほとんどないのがわかる。この背景には、さまざまな役割を持つ立方体を組み合わせ、思い思いのものを作り出す“あのゲーム”の影響があるという。

「小さい頃から『マインクラフト』をPCで遊んでいました。ブロックを並べて、建物や道路をリアルに作るのが楽しかったですね。あとは街作りゲームの『Cities: Skylines』にも夢中になって、受験勉強そっちのけで遊んでいました(笑)。現在のジオラマ作りにも影響はあると思います」

2022.12.05(月)
文=ジャンヤー宇都