「芸術は爆発だ!」という言葉でもよく知られる岡本太郎。岡本太郎の過去最大規模の大型回顧展が東京都美術館で開催されている。今回は、『13歳からのアート思考』の著者で、全国各地でアートの授業を行う美術教師の末永幸歩さんに「展覧会 岡本太郎」の鑑賞のヒントを教えてもらいました。

※作品と岡本太郎ポートレート Ⓒ岡本太郎記念現代芸術振興財団


なにをどう見ればいいかわからない

 私がかねてより尊敬している芸術家の一人が岡本太郎さんです。私が美大生だったころから、彼の考え方に、大きな影響を受けてきました。

 今回、その岡本太郎の大型回顧展である「展覧会 岡本太郎」についての執筆のご依頼をいただき、期待感をもって東京都美術館へ足を運びました。

 しかし展示室に入るや否や、少し戸惑ってしまいました。入り口から見渡す広い展示室の四方八方に絵画や彫刻の大作が点在しており、どこから見始めていいものか迷ってしまったのです。

 ひとまず展示室を歩き回ってみましたが、「あれもこれも見なければ」と落ち着くことができませんし、どの作品も全体の色合いや雰囲気が似ているように感じられ、特定の作品がとくに気になるわけでもありません。

 しばらく迷った後、ようやく1枚の絵画の前に腰を据え、「どんな色か」「何が描かれているか」「どんな筆致で描かれているか」などについて、見ていくことにしました。

 しかし、すぐにまた別の迷いが生じました。何やらわからないけれど強烈な熱を持ったような作品を、冷静にまじまじと見ようとしている自分に違和感を感じ、次の疑問が浮かんできました。

 鑑賞とは、目を凝らして対象を見ることなのか……?

 この疑問について考えるにあたって、まずは岡本太郎自身の芸術に対する考え方に触れたいと思います。

2022.11.21(月)
文=末永幸歩
撮影=末永裕樹