名産品が生まれた経緯から知る小豆島の底力

 また、400年以上の歴史をもつ醤油と、ほぼ同時期にはじまったのが手延べ素麺作り。

 1598年に池田村の村民がお伊勢参りの途中に大和国・三輪に立ち寄り、素麺の作り方を持ち帰ったのがきっかけとされます。

 小豆島には素麺作りに必須な、小麦(海運業が盛んゆえ、入手できる)、塩、水が揃っていました。しかも、どれも良質。加えてその頃、素麺作りは農閑期の冬の作業。冬は、晴天が続き、瀬戸内の寒風が吹き寄せます。天候も味方となり、小豆島そうめんは「日本三大素麺」へと成長していきます。

 素麺工場を併設した「なかぶ庵」では製造工程を見学、体験することもできます。

 なかぶ庵の店主・中武義景さんは「素麺は1本の麺を、ひねりを加えたりしながら伸ばしていったもの。一方、蕎麦やうどんは折りたたんで切ったもの。断面が素麺は丸いけれど、蕎麦などには角がある。だから素麺は喉をスーッと通っていく。作る工程による食感の違いをわかると、美味しさにつながります」と。

 なかぶ庵では作りたての生麺もいただくことができます。これが素麺のイメージを覆す食感!

 ちなみに小豆島の素麺の特徴は、胡麻油の使用。胡麻油の製造は1858年からはじまりました。現在、国内シェア1位(50%)のかどや製油は、小豆島で創業しました。

 そして小豆島の名産といえば、オリーブもはずせません。

 オリーブは1908年に農商務省が国内自給を目指し、香川、三重、鹿児島の3県に依頼して試作したのが始まり。その中で唯一、成功したのが小豆島だったそうです。

 台風や害虫と戦い、日々オリーブの木と向き合ったという小豆島の人々。やがて宮内庁御用達の品となり、コンテストで賞を獲得するまでに。

 気候と地勢、ひたむきさとパイオニア精神にあふれた人々によって育まれた小豆島の伝統食。美味しさの中に、島の底力を感じます。

小豆島

●アクセス 高松空港からバスで高松港へ。高速船またはフェリーで土庄港へ約35分~
●おすすめステイ先 ラクラッセ・エンジェルロード
https://www.lakrasse.com/angel-road/jp/

【取材協力】
小豆島観光協会
瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること30年あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

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2022.10.22(土)
文・撮影=古関千恵子