この記事の連載

 「アウトドア×防災」をコンセプトに、新時代の防災術を提案しているアウトドアライフアドバイザーの寒川一さん。

 アウトドアの道具やスキルを生かした“日頃から楽しく備える防災術”を、「衣・食・住」の3回にわけてご紹介します。第2回は「食」編です。

第1回 命を守るアウトドアウェア5選


水や火を確保! 「食」を組み立てるアイテム5選

 第1回で紹介した「3の法則」によると、水は3日、食料は3週間または30日補給できないと命の危険があると言われています。そのため、災害時には食料よりも「水の確保」が最優先になります。

 「以前は横須賀の海沿いに住んでいて、2019年の房総半島台風で我が家も被災しました。その時に3日間停電したのですが、3日というのは結果論で、その時はまったく先が見えない状況でした。

 僕たちは備えもあったし、自力で火や明かりも確保できたので、はじめの2日は笑って過ごしていましたが、3日目にもなると、夏場だったので冷蔵庫の中身も全部ダメになり、さすがにテンションが下がり始めました。

 “これで断水もしていたら……”と思うと、浄水器を持っているとはいえ、近隣のことまで考えると、さらに余裕がなくなっていたでしょうね。この時の経験から、災害時には“心のリカバリー”も必要だと痛感しました。

 実際に被災してみると、物を備えるだけでは減る一方なので日に日に不安が募り、分け合う人たちの間で揉め事もおこりやすくなる。心のゆとりを失わないためにも、水や火、電気だけでも自分たちで補充できるようになることが理想です」

 それでは、災害時に役立つ「食」を組み立てるアイテムを紹介していきましょう。

●浄水器

 「ソーヤー ミニ SP128」は手のひらサイズの浄水器で、約38万リットルを浄水できます。付属のパウチのほか、ペットボトルやストローにも接続できて使いやすさも抜群。キャンプや海外旅行など、水事情がわからない場所でも重宝します。

 「成人が1日に必要とする水分量は1人約3リットルが目安と言われています。災害時にはすぐ補給できるペットボトルの飲料水のほかに、ポータブルな浄水器があると、雨水や川の水を飲料水に変えられて、“飲んでも補充できる”という安心感も備えられますよ。

 浄水器は家庭に1つではなく、1人1個備えてほしいもの。我が家では自宅のほかに、車にも備えています」(寒川さん)

●ガスバーナー

 「SOTO レギュレーターストーブ ST-310」は、コンビニでも手に入るカセットガス式のガスバーナーです。五徳付きなので安定感があり、メスティンや鍋を使った調理にも適しています。

「防災用に備えるなら、アウトドア用のOD缶仕様のガスバーナーではなく、燃料が調達しやすいカセットガス式のガスバーナーがおすすめです。災害時にはガスバーナーと、次に紹介するネイチャーストーブを併用すると、燃料を長持ちさせられます」(寒川さん)

2022.10.02(日)
文=田辺千菊(Choki!)
撮影=深野未季