この記事の連載
- 橋本和明インタビュー #1
- 橋本和明インタビュー #2
テレビマンの苦悩や焦りを切り取ってみたい
――「イザミと東京03」は、一線を退いたテレビディレクターたちがVTuberで一旗揚げようと画策するお話です。この設定になった経緯についても聞かせてください。
オークラさん、佐久間さんとの会議で「テレビマンも悩んでいて、過渡期だよね」という話が盛り上がったんです。自分たちの表現はどうなっていくのか、これから先どうやったら魅力的なコンテンツをつくりつづけられるか、みんな苦悩しているんですよね。その時代性を切り取ってみたいというのがひとつありました。
でも「テレビはどうあるべきか」が主題だと、エンターテインメントとしては重すぎる。そこからオークラさんが、VTuberをプロデュースする元テレビマンのコメディに昇華してくれました。
――そこにVTuberを掛け合わせるのが面白いです。
そこはオークラさんと佐久間さんの感性が大きいです。今だったらVTuberがいいだろう、と。その2つが掛け合わされるのが、極めて現代的なんですよね。
僕も仕事柄、TikTokやVTuberを観ることもあるけれど、真の意味でその面白さを捉えられているかというと正直自信がありません。やっぱり自分たちの世代は、暇な時間ができたら演劇や映画、それこそコントとか、よくできた“つくりもの”を楽しみたい世代なんですよ。そういう人間にとって、TikTokで次から次へ短い映像を見ていくことの面白さや、VTuberのライブでコミュニケーションしていく力の面白さは、理解したいしついていきたいけど、葛藤もある。
エンターテインメントの享受の仕方が劇的に変わっていく切れ目が時代の流れの中には存在していて、今まさにそれに直面しているんですよね。だから、時代を感じているテレビマンは、みんなどこかで焦りがある。「イザミと東京03」の設定はまさにその構図を切り取っていると思います。
――制作側にとっての自己言及的な要素も含まれているんですね。
僕は本当にすごい身につまされますよ(笑)。佐久間さんは今いろんなメディアにかかわっているけれど、僕は今も地上波ど真ん中に足を突っ込んでる人間ですから。でも、そういう哀愁やペーソスがあったほうが、絶対笑いは深くなると思うんです。それは03さんのコントのすごさにも含まれているところで。それこそ「イザミと東京03」をVTuberが好きな若い人が観てくれて、そこで「コントって面白いんだ」と思ってもらえたら嬉しいですね。
橋本和明(はしもとかずあき)
日本テレビ所属の監督兼ディレクター。主な担当番組は「有吉の壁」「有吉ゼミ」「マツコ会議」「笑う心臓」など。
『イザミと東京03』
第4話放送日:10月1日(土)14:30~15:00
※関東ローカル 毎週土曜放送、全4回(放送後、Huluにて独占配信)
※最新話はHuluで1週間先行配信、ディレクターズカット完全版もHuluで独占配信
※第4話放送後にスピンオフ2話もHuluで配信
出演:
東京03(飯塚悟志 豊本明長 角田晃広)
佐倉綾音
高杉真宙 ※第2話ゲスト
水野美紀 ※第3話ゲスト
上田航平(ゾフィー) ※第3話刑事
岡田義徳 ※第4話ゲスト
企画・演出:佐久間宣行、橋本和明
第1話・第4話脚本・全体脚本監修:オークラ
第2話脚本:蓮見 翔(ダウ90000)
第3話脚本:上田 誠、左子光晴(ヨーロッパ企画)
プロデューサー:横澤 俊之
コンテンツ プロデューサー:鈴木 努、大東徹也
製作著作:日本テレビ
https://www.ntv.co.jp/tokyo03sutaa
2022.10.01(土)
文=斎藤 岬