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東京03は全然座ってなかった

――座組を決める段階で03さんにも相談されたんでしょうか。

 全然しないです。多分この番組に関しては、佐久間さんと僕が組んでみたかったクリエイターの方を東京03さんに当てたらどんな化学反応が起きるかを試しているプロジェクトだと03さんは考えていて、自分たちが“まな板の上の鯉”になることを面白がってくれているんだと思います。その上で、03さんも「スタア」のときから「毎回発見がある」って言ってくださるんですよ。「こういうホン(台本)の書き方があるんだ」とか「自分たちの中にこういうやり方もあるんだ」とか。

――それを全部面白がって、自分たちのコントとして演じ切るのがさすがですね。

 そうなんです。普段の流派と違うタイプの台本が上がってきたら、大変ですよね。「タイムリープして困惑してる顔をやってください」と言われても、普通はできない。でもそれが一瞬でできてしまうんです。恋愛の要素が入ろうがタイムリープの要素が入ろうが、一瞬でリアルな世界にしてしまうのが03さんのすごいところです。

――今回の撮影中も、橋本さんから見て03さんのすごさをあらためて感じるところはありましたか?

 「全然座ってなかった」という印象がありますね。

――座ってない?

 早朝から夜まで13時間くらいかかる撮影だったんです。普通、一日中撮ってたら演者さんも疲れてくるじゃないですか。でも03さんはずっと立って本読みしてたり、スタンバイしながらほかの人の芝居を見て「面白いね」って話してたりするんですよ。もっとダラッとしててもいい立場なのに。だから我々スタッフもだらしないところを見せられないし、共演者の方たちにもその真剣さが共有されるんですよね。現場の空気は主演の人がつくるんだなとあらためて感じました。

――タフですね。「スタア」でも「強豪校の部活みたいな現場だった」という話がありました。

 「スタア」のときもそうだったんですが、事前に飯塚さんが台本を読んで言い回しを細かく直してくれるんですよ。「こんなに細かくやってくださるんだ」って毎回感動するんですけど、今回は03さんの単独公演と台本を渡す時期が完全に重なっちゃったんです。「忙しいだろうし大丈夫かな」とスタッフで話してたら、送って2日後くらいには完璧なものが返ってきました。

 よくよく聞いたら、泊まっていたホテルの大浴場の風呂で3人で読み合わせして直したらしいです。やっぱりこの人たちおかしいなって(笑)。とにかくコントへの愛がすごいんですよね。コントのことで頭がいっぱいだから、単独の本番が終わっても別のコントをどう直そうかって取り組める。そのメンタリティのすごさを感じました。

角田さんはお芝居が一段とすごくなってた

――角田さん、豊本さんはどうでしたか?

 角田さんはお芝居が一段とすごくなってましたね。4話で岡田義徳さん演じるイザミのお兄ちゃんと掛け合いをするシーンがあって、岡田さんにすごまれた角田さんが「え、僕ですか!?」って怖がる顔をするんですけど、それがもう「何パターンあるんだこの人は」という感じで。それを受けて岡田さんも芝居をどんどん変えていくので、4話はいい意味で芝居合戦になってます。

 角田さんはいろんなところでドラマに出られているので、俳優さんとセッションする感覚があるんでしょうね。俳優としてのすごみを感じました……って、こういうことを言うと、角田さんに「いじってる」って言われるんですけど(笑)。

 豊本さんは、その後のシーンでケンカに応戦しようとして、一発で首をひねられて倒れるんです。そのやられっぷりが見事すぎて、現場がめちゃくちゃウケてました。

――さすがプロレスファン!

 そう、こういうところで活きるんだ! って(笑)。一発でやられる人をあんな見事に表現できるのは、豊本さんの身体の動きの感覚が優れているからだと思います。

 全4話の中で03さんそれぞれの武器を目のあたりにできる作品ですね。全部が全部、こちらがホンの段階で想定していたものより面白くなるんです。

2022.10.01(土)
文=斎藤 岬