キャスティングはすべて第一希望が叶った

――キャスティングについて、最初から「牧本は阿部さん」と決めていたんですか?

水田監督 というよりも、とにかく「まずはよい脚本を作ろう」というところからでした。『STILL LIFE』というお手本を日本に落とし込んで、我々なりによい脚本を仕上げることが最優先で。その後、キャスティングに入ったんです。阿部さんもですが、今回は全員第一希望でいけたんですよ。

阿部 え、すごい!

水田監督 満島(ひかり)さん、宮沢(りえ)さん、(松下)洸平くん、でんでんさん、(松尾)スズキさん、坪倉(由幸)さん。宇崎(竜童)さんを思いついたときは、我ながらあっぱれと思いましたね。皆さんが出てくださったのは、やっぱり阿部さんが「やる」と言ってくれたことが大きくて、それが品質保証になっていると思うんです。

阿部 僕はまた水田監督とできて、素直にすごくうれしかったです。今までずっと宮藤官九郎さんのオリジナル脚本だったのですが、今回はリメイクですし、倉持さんの脚本も初めてだったので。

――演じた牧本のような役はキャリア初とプレスにありました。牧本をやっていての面白さ、難しさなどは、いかがでしたか?

阿部 今回は、ロケ先に『STILL LIFE』のDVDを持って行ったんです。「明日はこのシーンを撮る」となったら、そのシーンのエディ・マーサンの演技をずっと観ていました。なんとも言えない表情をされているんですよね。感情がよくわからない芝居をずっとされているから、それを参考にしたかったんです。けれど、難しかったですね。

 結局、牧本は人に話を聞きに行くような立場だから、その人によって変わっていったほうがいいし、あまり作りすぎないほうがいいなと思いました。共演者の皆さんは「はじめまして」の方が多かったので、すごく新鮮で。特に、山形のキャストの方たちがすごく面白かったです。

2022.10.01(土)
文=赤山恭子
写真=平松市聖