そして「スプラトゥーン」の世界設定はかなり作り込まれており、おまけにユニークだ。イカたちはストリートファッションでカッコよくキメているし、明るい色のインクを撒き散らして街中を塗りつぶす。珍しくありつつも、ゲームのルールにぴったりとあった世界なのだ。

『スプラトゥーン3』では「バンカラ街」という場所が舞台になっており、九龍城砦を思わせるごちゃごちゃとした高い建物が並ぶカオスな街並みが特徴となっている。そこで開催される「フェス」では、山車が街中を練り歩き、和とラテンが融合したかのような音楽が流れていたりと、ほかのゲームにない唯一無二の魅力となっている。

 実は前作『スプラトゥーン2』では、プレイヤーに「混沌」か「秩序」のどちらかを選ぶ権利が与えられていた。結果として混沌側が選ばれ、それが『スプラトゥーン3』に引き継がれて作風に影響を与えている。つまり、ユーザーもまた一緒になって「スプラトゥーン」の世界を作ったという感覚が存在するのである。

 

理由4:対戦ではない部分もしっかり作り込む

「スプラトゥーン」シリーズは対戦アクションシューティングである。4対4で各プレイヤーがインクを塗り合って戦い、勝敗を決めるわけだが、『スプラトゥーン3』ではその対戦以外の要素も非常に充実している。

 対戦の練習にもなり物語も魅力的なひとり用モード「ヒーローモード」、仲間と協力してシャケを狩るアルバイト「サーモンラン」、バンカラ街で流行しているカードゲーム「ナワバトラー」、そしてロッカーに雑貨を飾ったりするカスタマイズ要素も存在する。

 実は、対戦ゲームで対戦以外の要素を充実させるのはかなり重要である。たとえば2023年にカプコンから発売が予定されている『ストリートファイター6』もシリーズ初の充実したひとり用ストーリーモードを用意しているし、バトルロワイヤル系シューターの『Apex Legends』もキャラクターの物語・設定に注力している。

2022.09.21(水)
文=渡邉卓也