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●美輪明宏主演・演出による舞台で、本格的に俳優デビュー

――その後、美輪明宏さん主演の舞台「黒蜥蜴」のオーディションで、雨宮潤一役に抜擢。2013年、本格的な俳優デビューを飾ります。

 大きな舞台に立てること自体、とても嬉しかったんですが、この作品がライフワークでもある美輪さんが演出してくださる芝居が全然できなかったんです。どこかで恥ずかしさのようなものもありましたし……。今思い返すと、とてもいい経験だったとは思いますが、稽古中も公演中もずっとキツかったです。

――同年、橋口亮輔監督の映画『ゼンタイ』に出演されたきっかけは?

 事務所のワークショップに参加していたとき、橋口監督のほか、沖田修一監督や青山 真治監督といった、スゴい監督さんと出会ったんです。その出会いがきっかけになって、『ゼンタイ』に出演することになったのですが、それまでやってきた演劇での芝居がフィードバックされながらも、映像独自の難しさを感じました。特に、どれだけ削ぎ落して、ナチュラルな芝居ができるのか? ということです。

●「花子とアン」に出演しながらも、募る釈然としない気持ち

――翌14年、NHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演。仲間由紀恵さん演じる蓮子の駆け落ち相手・宮本龍一を演じられました。

 オーディションに受かって、とても嬉しかったですし、「このままスターになれるんじゃないか?」と勘違いするほどでした(笑)。ただ、それなりの反響もあるなか、ここでも満足がいく演技ができなかったですし、どうしていいかも分からないし、どこか釈然としないままでした。それで、また演劇の世界に戻ることにしたんです。そこで刺激的な演出家に出会い、一緒に長い時間を過ごすことで、芝居の基礎的なものをしっかり学ぶことができたのは大きかったです。たとえば、「BENT」で出会った森新太郎さんや「ETERNAL CHIKAMATSU」で出会ったデヴィッド・ルヴォーさん。「花子とアン」の後、そのまま映像を続けていたら、今とは違った役者人生を送ったような気がしますね。

――15年に公開された初主演映画『グッド・ストライプス』では、「第7回TAMA映画賞」において最優秀新進男優賞を受賞されます。

 この映画の撮影は、「花子とアン」の前でした。なので、現場でもいい芝居ができた感じがしなかったですし、ただ恥をかきたくないという気持ちでいっぱいでした。だから、その演技が評価されたことに対しても、「これでいいの?」という感じで、やっぱり釈然としなかったですね。

●自分がやりたい表現が見つかった作品

――それでは、中島さんにとって転機となった作品を教えてください。

 冨永昌敬監督が演出された「ひとりキャンプで食って寝る」(19年)というドラマに、1話だけゲスト出演したんですが、そのときに思い切った芝居をやれたんです。そこから自分がやりたい表現みたいなものが見つかった気がしますし、そのドラマの別の回の演出を横浜聡子監督がやっていたことが縁で、横浜監督の『いとみち』に呼んでもらえたんです。『いとみち』はコロナ禍で休んだ後、初めての現場だったんですが、とても楽しく自信を持って芝居ができて、評価もされました(第35回高崎映画祭最優秀助演俳優賞)。そういう意味でも、この作品は僕にとって転機の一作といえるかもしれません。

〜次回は最新出演映画『よだかの片想い』についても語っていただきます〜

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中島 歩(なかじま・あゆむ)

1988年10月7日生まれ。宮城県出身。モデル活動後、2013年に舞台「黒蜥蜴」で俳優デビュー。14年、NHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演するほか、15年公開の初主演映画『グッド・ストライプス』では、「第7回TAMA映画賞」最優秀新進男優賞を受賞。22年には『いとみち』『偶然と想像』で「第35回高崎映画祭」最優秀助演俳優賞を受賞した。

映画『よだかの片想い』

顔の左側にアザがあるアイコ(松井玲奈)は、幼い頃から畏怖やからかいの対象にされてきたことで、恋や遊びを諦め、大学院でも研究ひと筋の日々を送っていた。そんな彼女の生活が取材を受けたことを機に一変。監督の飛坂(中島 歩)によって、彼女の物語が映画化されることになるが、アイコは彼の熱意や人柄に惹かれていく。
©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会
9月16日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
https://notheroinemovies.com/yodaka/

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Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2022.09.16(金)
文=くれい響
写真=平松市聖