高度1,000メートルの世界へ

 準備が完了したら1人ずつバスケットへ乗り込み、いざ空の旅へと出発です! 

 ふわっと浮き上がって、あっという間に上昇し、町がどんどん小さく見えてきます。風に揺られながらの浮遊感は、飛行機などでは味わえない独特の感覚。全身に感じる風が気持ちよく、360度のパノラマは熱気球ならではの絶景です。

 この日は雨が降った後だったため、大気中のチリが落ちて空気が澄み、美しい眺望が広がります。日の出の光景は感動的で、思わず見入ってしまいます。

 上昇や下降を繰り返しながら、風に乗って熱気球のフライトを楽しんでいると、鳥がすぐ横を飛んでいく姿が見られることも。町の喧騒もここには届かず、自然の音だけが聞こえ、最高に癒やされます。

 渡良瀬遊水地は栃木・群馬・茨城・埼玉の各県にまたがる場所にあり、上空からは浅間山や赤城山、日光・男体山などの名山のほか、さいたま新都心や、東京スカイツリー、さらに新宿の高層ビル群まで望めます。

 また、ハート型をした谷中湖や、利根川、関東平野の独特の地形も楽しめます。

 フライトは約45分~1時間。風の力で進んでいくので、その日の風の状態によって毎回コースが変わり、乗るたびに異なる風景を満喫できます。

 そもそも、日本にはこれまで熱気球に関する法律や観光事業の制度がなかったそうです。そこで、ジャパンバルーンサービス代表の町田耕造さんが、観光フライトの盛んなオーストラリアの制度を導入し、始めたのがこの熱気球観光フライトです。

 今回のフライトに同乗してくださったパイロットの副島弘壮さんは、オーストラリアに渡航し、観光熱気球の制度を学び、免許を取得。今、観光事業のパイロットの育成に力を入れているそうです。

 「世界中で観光フライトは行われていて、世界遺産やワイナリーなどの上空を飛んでいます。日本にも世界に誇れる大自然があるのに、熱気球を活かさないのはもったいないと思い、観光フライトを立ち上げました。

 日本ではまだなじみの薄い熱気球ですが、安全に楽しめることを知ってもらいたいですし、熱気球で大自然を体感することで、土地の魅力を知ってもらいですね」と副島さんは話します。

2022.08.29(月)
文=佐藤由樹