月の運行と「テロワール」との不思議な化学反応
ワインの味わいを決定づける土壌や気候、地形などの自然条件を「テロワール」と呼びます。この中には、そこに住みワイン作りをする「人間」も含まれています。ワインの作り手たちが、自分の経験や独自の自然観に加え、天体の動きにも興味を持ち始めたという事実は、とても興味深いと思います。かつてワイン愛好家の中には、「ワインは味がすべて。ビオワインはイマイチ」と評する人もいましたが、昨今では「美味しい!」と思ってラベルを見たら、ビオだったというように、ワイン自体のクオリティも上がっているようです。ビオディナミ農法が、月の満ち欠け理論を盲信するのではなく、作り手の感覚を磨く道具(ツール)として進化してきた結果ではないでしょうか。
ヨーロッパの自然派ワインに刺激を受けて、日本でも“農薬や化学肥料を使わない”自然派を提唱するワイナリーが、密かに増えています。有機農法から一歩踏み込んで、ビオディナミ農法を実践しているワイナリーもあります。山梨「ルミエール ワイナリー」、山梨「金井醸造場」の名前を挙げておきましょう。
月の運行に基づいて畑を耕し、プレパラート(ビオディナミで用いる調剤。植物や牛糞、水晶などを用いる。製法も散布方法も独特)を散布、自然の恵みによってたわわに実ったブドウを収穫し、月の満ち欠けと共に、そこに住まう人間が、ワインを完成させるのです。月の運行と「テロワール」との不思議な化学反応が、ワインの味に反映されるのは当然のこと。ビオディナミで作られたワインには、自然を敬い宇宙に身を委ねる作り手たちの真摯な想いが溶け込んでいます。そんな奇跡のようなワインを、月を愛でながら飲んでみたいと思いませんか。
山梨「ルミエール ワイナリー」
電話番号 0553-47-0207
山梨「金井醸造場」
電話番号 0553-22-0148
Column
岡本翔子の「月」にまつわる暮らしの手帖
「岡本翔子の日めくりMoon Calendar」を連載中の岡本翔子さん。このコラムでは毎月1日に、「月」を身近に感じながら、季節の移ろいをこまやかに感じ取り、日々の暮らしを豊かに営むためのヒントをご紹介します。
2013.10.01(火)