ワイナリーの数としては国内四番目の山形で、注目の産地が上山市と南陽市。蔵王連峰の麓にある上山には100年以上の歴史をもつ老舗があり、ワイン造りの土壌が備わっていた。そこに、新たなワイナリーが加わり、面白いムーヴメントが起きている。
しかも、上山、南陽ともに温泉町で“湯とワイン”という、旅人にとって最高の組み合わせに。
他にも庄内地方にあるレストラン付きのワイナリーや出汁の旨みと日本ワインを合わせた店など、美酒と食材豊かな山形らしいスポットを巡る。
今回は、山形の地元ワインが楽しめる温泉宿を2軒ご紹介。
》地元のワインが揃う館内のセラーが魅力・山形県上山市「名月荘」の紹介はこちら
重厚感ある温泉宿で南陽の土地の豊かさを体験
◆山形座 瀧波(やまがたざ たきなみ)
![中庭を抜けてレセプションのある母家へ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/2/1280wm/img_a2bece32087103c56deff88360b4c47f190334.jpg)
良質なワイン用ブドウが育つ南陽市の赤湯温泉にある「山形座 瀧波」。
![畳敷きのラウンジでは温泉に入った後やディナーの後に宿泊者たちがくつろぐ姿が。フリードリンクも用意されている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/7/1280wm/img_c73146928c37401c7d9d08315471293d110163.jpg)
約350年前の庄屋を移築した母家は、アルネ・ヤコブセンのチェアが配された和モダンなインテリアが居心地いい。
![「山形座 瀧波」で楽しめるボトルワイン 6,500円~。左2本が「イエーローマジックワイナリー」、右2本が「グレープリパブリック」のもの。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/7/1280wm/img_37d34046765997494414c54b8ee4a933170813.jpg)
チェックインを済ませ、部屋の露天風呂に入ると、湯の花が浮かぶ豊かな湯で疲れが癒やされる。夜はというと、オープンキッチンでの心待ちにしていたディナーだ。
![ディナーコースより。前菜は南陽産アスパラを使った冷製スープ、アスパラのフリット、最上鮎の羽前蒸しなど。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/d/1280wm/img_3daf465a7616d6de2589defab007b0eb91010.jpg)
2021年、新潟県三条市のミシュランシェフだった原田誠さんがチーフシェフに就任し、山形の野菜や魚などのポテンシャルを生かしたイタリアンで楽しませる。
![魚料理はパン粉焼きしたアイナメにマリネした東北の野菜、ミズと豆をのせた軽やかな逸品。グラスワインは1,300円~。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/1/1280wm/img_a154e9b5690613eecfe812e8d899be8092991.jpg)
「グレープリパブリック」、「イエローマジックワイナリー」といった地元産のワインとのマリアージュは、南陽の太陽と土からのギフトを“美味しさ”で体感できる時間。
![天童木工のチェアが置かれた部屋“YAMAGATA”。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/0/1280wm/img_a05ca7c59392f9db5f82c46bb363164259310.jpg)
心満たされ熟睡した翌朝は、山形の漬物納豆や芋煮など東北の滋味深い朝食で1日が始まる。
![部屋の露天風呂は、源泉をそのまま引いた湯。もとは61℃で、湯守が湯量を調節しながら約42℃に保っている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/1280wm/img_6a1e00b78279695e2ed1b0b05df32e29263299.jpg)
山形座 瀧波(やまがたざ たきなみ)
所在地 山形県南陽市赤湯3005
電話番号 0238-43-6111
客室数 19室
料金(1名) 39,930円~(1室2名利用、2食付き)
http://takinami.co.jp/
山形ワインの台風の目、南陽発ワイナリーの挑戦
![左から、「イエローマジックワイナリー」の岩谷さんご夫婦、「グレープリパブリック」の矢野さん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/8/1280wm/img_b82a24de3ccad09cfcb6018daf3cdfff134280.jpg)
ワイン通の間でも注目の南陽のワイナリー、「グレープリパブリック」の矢野陽之さん、「イエローマジックワイナリー」の岩谷澄人さんにこの地域でのワイン造りについて伺った。
「湿度が低いので有機栽培がしやすくいいブドウができます。収穫期に寒暖差がしっかりあることも大きい。うちでは酸化防止剤を使っておらず、その役目を果たすpHが低く酸が強めのブドウが作れるんです」(矢野さん)
同じく岩谷さんも南陽のブドウの質の高さに魅せられたひとり。「滋賀の『ヒトミワイナリー』で醸造に携わっていた時から南陽のデラウエアを仕入れていました。訪れるたびにすり鉢状の置賜盆地の環境がすごいなと思って移住。
他県では出せないワインが造れると確信しています」と話す。約30年の醸造キャリアをもつ岩谷さんが辿りついたのが噓のないワイン造りだという。「年によってブドウの出来が違うなかで、言い訳せずに個性としてどう表現できるか。
ワインの魅力はヴィンテージで味を繫いでいけること。その年にしかできないテロワールを刻む面白さがあります」。ワイン造りにマニュアルはないという矢野さんは「毎年が挑戦です。当たり前のことをやっていたらつまらないので、様々なアプローチをして”美味しいもの”を造っていきたい」と話す。
2人の熱きトークは止まらず、岩谷さんの右腕である妻の恵美さんも加わった、3人での座談会をCREA WEBで公開。醸造の裏話や本音、ワイン造りの醍醐味などをお伝えする。
2022.07.30(土)
文=CREA編集部
Photogaraphs=Jun Hasegawa
CREA Traveller 2022 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。