紅葉を見に、京都へ行こう! 京都在住の写真家・小林禎弘さんが、長年の撮影の経験を踏まえて紅葉の名所を紹介します。京都の人ならではの行き届いた観光案内、撮影指南としてもお楽しみいただけます。
【第4位】無鄰菴
無鄰菴(むりんあん)は、明治・大正の元老である山県有朋が明治27年(1894)から明治29年(1896)日清戦争を挟んで造営した別荘です。
有朋自ら庭園の設計・監督にあたり、平安神宮の庭園も手掛けた造園家小川治兵衛が作庭しました。現在も残る南禅寺界隈お屋敷庭園群とでも呼べるものだったのです。
当時、この辺りには南禅寺以外に何もありませんでした。当時開通したばかりの琵琶湖疏水の水をとり入れ、三段の滝や池、芝生を配した池泉廻遊式の庭園をつくりあげました。
この庭を流れた疏水の水は次のお屋敷へ、そしてまた次のお屋敷へと流れて、網の目のように行き渡った水は、最後に白川か疎水に流れ込みます。一帯の庭園群は、疎水がなければ成り立たなかったのです。
無鄰菴の紅葉は、京都のなかで特に色鮮かやだと言われます。その理由として朝夕と日中の寒暖の差が大きいこととが挙げられることが多いのですが、もう一つあります。それは暑い夏のさなかにもたっぷりと水をもらえることです。山に生えた楓がカラカラの天気に弱り切った時でも、無鄰菴の庭園の楓は葉の先まで養分が行き渡るのです。京都で長年撮影している私の目から見ても、ここの紅葉の美しさは抜きんでていると思います。
庭の奥から紅葉を写すなら、池と上にかぶさる楓、遠くに見える屋敷をうまく組み合わせて撮影してください。写真のように、苔と落葉、紅葉の枝、屋敷もよいでしょう。
ここは明治36年(1903)4月21日、元老・山県有朋、政友会総裁・伊藤博文、総理大臣・桂太郎、外務大臣・小村寿太郎の4人によって日露開戦直前のわが国の外交方針を決める「無鄰菴会議」が開かれた歴史の舞台でもあります。
因みに、周辺のお屋敷の庭園も小川治兵衛が手がけたと言われています。また、疎水からの取水は一旦やめてしまうと二度と取水できません。いわゆる既得権というわけですね。
すぐ西隣には、京料理の超有名店「瓢亭」があります。
無鄰菴の紅葉スポット
交通手段 京都市営地下鉄「蹴上駅」から徒歩約7分。市バス「神宮道」バス停から徒歩約10分。(西行き[三条京阪、京都駅方面行き]からは徒歩約15分) 。「京都会館美術館前」バス停(平安神宮大鳥居下)から徒歩約9分
小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。
2013.09.27(金)