『町田くんの世界』のオーディション後、豪華キャストと共演することを知らされる映像が、YouTubeに上がっているが、これがもう観ているだけで胸が痛い。

 岩田剛典、高畑充希、前田敦子……次々と共演者の名が読み上げられ、細田佳央太は表情豊かに驚くが、関水渚は台本に目を落としたまま硬直状態。

「そこの主演とヒロインです」

 と念押しのように告げられる。関水は涙しながら「不安です」と声を絞り出すのだが、その涙をぬぐう手が拳! 私はそこで彼女のド根性を見て取った。

 ちなみに主役の町田くんを演じる細田佳央太は「噛み付いていくしかない」とうっすら笑って答えており、男版北島マヤ登場だと思った。彼に対するその印象はいまだ変わっていない。

 

「私たちはなんにでもなれる。なりたいものになれる」

 関水渚の魅力は「剥きだしの生命力」である。彼女は大物の間に挟まれるキーマンの役が多い。大きな流れにひょっこりと彼女が投げこまれることで、不思議な日常感が生まれるのだ。2020年の『キワドい2人-K2-池袋署刑事課 神崎・黒木』も、山田涼介と田中圭の間にいる頑固そうなギャル役でも、不思議なリアリティを加えていた。

 2021年の『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』は特に、続編を願ってやまない。クセあり一匹狼の刑事を演じる香取慎吾と、若さと正義感で突っ走る関水渚のバディが本当に良かった。関水のムキになる感じが、香取の静かな演技と絶妙に絡み合い、不思議なスピード感をもたらしているイメージ。香取のように重く大きな存在感と相性の良い太い生命力は、たくましく咲いているひまわりのようだった。

 現在23歳。まちがいなく朝ドラのヒロインの候補の一人だが、案外、別の意外なルートを辿って、時代を担う大女優になる気もする。

 2020年、ヒロインを務めた映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』では、関水演じるコックリが、長澤まさみ演じるダー子にこんな言葉をかけられるシーンがある。

「私たちはなんにでもなれる。なりたいものになれる」

 フィクションを超えて今、彼女はそれをそのまま経験しているところ。

『町田くんの世界』の如く、様々な色の夢を手に高く大空を飛んでいってほしい。女優デビューから3年、これからが伸び盛り、いや、飛び盛りだ!

2022.06.14(火)
文=田中 稲