「シラノ・ド・ベルジュラック」でホンを形にしていく面白さを感じた
――本作は、宝塚歌劇団で演出家として活躍され、人気を博した上田久美子さんの退団後初の脚本作品であることも大きな話題です。古川さんは上田先生の作品はご覧になったことがありますか?
舞台は拝見したことはないのですが、先日おこなわれた僕のミュージカルコンサートに出てくださった明日海りおさんの主演作も手がけられたとのことで、どんな方なのか気になっていました。
お会いするより前に脚本を読ませていただいていましたし、インタビューなども読ませていただいていたんですけれど、制作発表の場でお会いして、作品から感じていた印象とは少しギャップがありました。
宝塚歌劇団を退団されて、ここからフランスに1年留学されるというお話も伺って、経験を重ねて評価も得ていながら、新しい挑戦をするという姿勢に感銘を受けて、素敵な方だなと思いました。上田先生の思い描く世界を作り上げるため、僕も精一杯力になれたらと思っています。
――演出を手がける一色隆司さんは、これまで主にテレビドラマの監督(ドラマ『精霊の守り人(第3部)』、『麒麟がくる』、『剣樹抄~光圀公と俺~』など)として活躍されてきた方ですが、これまでお仕事をしたことは?
ご一緒するのは今回が初めてです。あの脚本がどういう行程を経て形になっていくのか、すごく楽しみではあります。一色さんも制作発表のときにおっしゃっていましたが、読んだときに目の前に広がっていく世界が、朗読劇という範囲に収まらないスケールというのはその通りで。セリフを読んでいくだけでは成立しないというか、どんどん世界が膨らんでいって言葉だけでは追いつかないくらい広がりがあるシーンが何か所かありますし、“スペクタクルリーディング”がどういうものになるかは、これからみんなでひとつひとつ形にしていく作業になると思うんです。今年の頭に「シラノ・ド・ベルジュラック」という作品を経たことで、その過程に面白みを感じているので、今回もとても楽しみにしています。
――そう伺ったら、「シラノ・ド・ベルジュラック」でどんな経験をされたのかが気になります。
表現の方法が全然違いました。セリフをラップで語ったりすることもですし、小道具やマイムで場面を表現するんじゃなく、動きは最小限に抑えて、言葉の力でお客さんの想像力を掻き立てていく演出だったんです。説明的な表現を極力抑えることで、ご覧になる方の想像の可能性を限定しないというか、その世界観に新しさを感じました。
最初、本を読んだときには、どういうことなんだろうって「?」が頭にいっぱい浮かんでいたんですが、演出の谷(賢一)さんの演出を受けると、こういう解釈ができるんだって驚いたり、納得したりすることがたくさんあったり。自分が最初に本読みで読んで想像していたものと、まったく違う舞台が出来上がったんです。
この現場を経験したことで、読解力が鍛えられたと思います。この脚本も、読んで一回では理解できない部分がありますが、どういうことなんだろうって考えさせるからこその面白さや魅力を感じています。
2022.06.07(火)
文=望月リサ
撮影=深野未季
ヘアメイク=平山直樹(wani)
スタイリング=森田晃嘉