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明日海りおさんが考えるヒロイン「サラ」像とは?

 今回、明日海りおさんが演じるサラ・ブラウンにはどんなイメージを抱いているのだろうか。

 「私が宝塚歌劇で拝見したサラは、娘役が演じられたヒロインなので、とびっきり可愛くて健気というイメージがあります。ですから、私に務まる役なのかなと思っていたのですが、今回の台本を拝読したところ、実は一生懸命で正義感や責任感がある女性だと思いました。まだまだ浅いのか、深読みしすぎなのかはわかりませんが、おしとやかで可愛らしい完璧なヒロインというよりは、物事をやり遂げようとする一途な情熱を持っている女性で、突っ走ってしまうところもあります。

 サラは自分のことをギャンブラーであるスカイよりも正しい行いをしている人間だと思っていますが、実はスカイのほうが物事の本質を見抜く力や人の心を掴むことができる人物なんです。スカイが人として一歩も二歩も先にいるので、サラには少し偏っていたり、未熟な部分があったりしてもいいのではないかと今は感じています。スカイに恋してもらえるような天真爛漫でピュアな部分を感じさせる存在でありたいですね」

初めての外国人の演出家との作品づくり

 サラを演じることで、今まで目にしたことのない明日海りおさんの新たな魅力が引き出される、そんな予感がする。今回の演出を手がけるのは、35歳以下で2度もトニー賞にノミネートされたという実力を持つマイケル・アーデン。演出を手がけた数々の作品で受賞し、長年にわたり俳優としても活躍してきた人物だ。彼との作業には、どんな期待を抱いているのだろうか?

 「私は海外の演出家の方とご一緒するのは今回が初めてなのですが、私が想像していたアメリカンな人のイメージとは全然違っていました。すごく優しいお人柄で、演者の一人ひとりをとても大切にしてくださる方なんです。どちらかといえば私は“こうしたほうがいい”という明確な指示をいただきたいタイプなのですが、マイケルさんは“すべてが備わっているから、何も考えなくていい。HAVE A FUN!(楽しんで!)”という感じなんです。

 楽しい現場ではありますが、少し不安もあります。もちろん、動きや台詞の流れについてはきちんと意味を説明してくれて、こうしよう、という作戦も立ててくださいます。私が心のままに動いたり、台詞を発したりしたときに、“いいね”とおっしゃって取り入れてくださるので、一緒に作っていくという実感はあります。

 何から作っていくのかということは、日本の演出法にもいろいろと差はありますが、海外独特の時間の使い方があるようです。やはり言葉の壁もありますから、意思の疎通には時間がかかりますが、通訳の方を通してやりとりを重ねていまして、お稽古でこれを乗り越えた先には良いものができるだろうという思いがあります」

» 明日海りおインタビュー【後篇】はこちら

明日海りお

1985年6月26日生まれ、静岡県出身。2003年に宝塚歌劇団に入団。可憐な容姿と高い技術力を持った男役として下級生時代から注目を集め、14年に花組トップスターに就任。19年11月に惜しまれながら退団。退団後はミュージカル『ポーの一族』や主演ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』、NHK連続テレビ小説「おちょやん」、日本テレビ「コントが始まる」、日曜劇場「DCU」などに出演し、舞台・テレビドラマを中心に活躍中。

ミュージカル
『ガイズ&ドールズ』

天才ギャンブラーのスカイ(井上芳雄)とお堅い軍曹サラ(明日海りお)、スカイの仲間のネイサン(浦井健治)とネイサンの婚約者で踊り子のアデレイド(望海風斗)が繰り広げるコメディミュージカル。

公演期間 2022年6月9日(木)~7月9日(土)
会場 帝国劇場
演出 マイケル・アーデン
https://www.tohostage.com/guys_and_dolls/
※福岡公演あり

次の話を読む明日海りおインタビュー【後篇】 「特別な舞台に見合う役者でいたい」 天真爛漫なヒロイン役に挑戦

2022.06.05(日)
文=山下シオン
撮影=深野未季
ヘアメイク=山下景子(コール)
スタイリスト=大沼こずえ(eleven.)
衣装協力=ヴァンドームブティック伊勢丹新宿店