東京のトイレを「おもてなし」文化の象徴に。そんなユニークかつ斬新なプロジェクト「THE TOKYO TOILET」(以下TTT)。このプロジェクトに共感したドイツの映画監督ヴィム・ヴェンダースが次の作品の舞台を渋谷の公共トイレに制作することを発表しました。
TTTプロジェクトとはどんなものなのか? ヴェンダースの次回作はどんな内容になるのか? 期待に胸がふくらみます。
東京の公共トイレがポジティブに生まれ変わる
いま、東京都渋谷区内に公共トイレが続々登場していることを知っていますか? 新しく誕生する公共トイレはいずれも個性的かつスタイリッシュ。一見してはトイレとはわからないような“新しい公共トイレ”たちなのです。
これらのトイレはTTTという、公共トイレ17カ所を新しく生まれ変わらせるプロジェクトによるもの。公益財団法人日本財団と渋谷によって2020年からスタートしました。今までの公共トイレのネガティブなイメージを覆し、ジェンダーレスやダイバーシティに対応する、誰もが快適に利用できる施設としてトイレを変身させます。
参加するクリエイターは16人。錚々たる顔ぶれが並ぶ
それぞれのトイレのデザインを手がけるのは、世界で活躍する建築家やクリエイター16人。安藤忠雄、伊東豊雄、片山正通、隈 研吾、坂倉竹之助、佐藤可士和、佐藤カズー、田村奈穂、NIGO®、田村奈穂、坂 茂、槇 文彦など、錚々たる顔ぶれです。2022年6月以降は、後 智仁、小林純子、藤本壮介、マーク・ニューソン、マイルス・ペニントンが手がけた公共トイレも完成予定です。
日本のおもてなしをトイレから発信
たとえば、安藤忠雄によって設計された「神宮通公園トイレ」は、上に円盤が乗ったようなデザイン。「日本のおもてなしを世界に発信したいという話を聞き、トイレというあまり綺麗なイメージのない場所が美しければ、日本人の心が世界に伝わるだろうと思いました」と、安藤。スリット状の外壁から光や風が入り、トイレの中にいても美しいと感じられるデザインにこだわったそう。また、急な夕立の時には雨宿りもできるようにと、大きく張り出した丸い屋根もポイントになっています。
「公共トイレは長く使っていくもの」というポリシーのもと、清掃にも力を入れています。どのトイレも1日2~3回ほど清掃するのが、TTTプロジェクトのルール。渋谷区という立地もあり、神宮通公園のトイレも落書きされたり、汚されたり、この2年間でいろいろなことがあったそうですが、丁寧なメンテナンスの結果、驚くほど美しく保たれています。清掃員のユニフォームは、ファッションデザイナーNIGO®が手がけたもの。ネイビーのツナギに、背中にはロゴがあしらわれています。
2022.06.02(木)
文=鈴木桃子
写真=平松市聖