新聞やテレビなど主流メディアが主題的に報じることはないが、現実の皇室の家族はすでに多様化している。2014年に66歳で亡くなった桂宮宜仁(かつらのひとよしみや)親王に、事実婚の関係にあった女性がいたことは公然の秘密である。女性は宮家の私的職員の立場で、介護が必要な桂宮を長年支えた。

 三笠宮家を継承予定だった寛仁(ともひと) 親王はアルコール依存症のために信子妃との関係が悪化した。夫婦は2004年から一時期を除き別居状態にあった。2人の間の娘たちと信子妃との関係も悪くなり、寛仁親王の逝去(2012年)のあとも、信子妃は宮邸には戻らず、母と娘はなお断絶状態にある。

 三笠宮家に彬子(あきこ) 女王・瑶子(ようこ) 女王、高円宮家には承子(つぐこ) 女王という未婚の女性皇族が三人いる。2022年4月現在、それぞれ40歳、38歳、36歳である。とくに、彬子女王は英オックスフォード大学大学院で博士号を取得し、美術史の研究者として著書や論文を著すなどのキャリアを積んでいる。

 彬子女王が結婚を志向していないかどうかまではわからない。しかし、今後、非婚を宣言する皇族も現れるであろう。さらに、性的少数者であると周囲に伝える皇族が出てくる可能性もある。家族が多様化するなかで、結婚し子供をつくることが皇族の役割であった時代は終わっていく。

 かつて、家族の「理想」であった皇室は、いまは、人びとの「現実」の写し鏡である。事実婚、離婚の危機、非婚、晩婚、親子対立、不妊へのバッシング……。社会における家族のさまざまな問題が、現実の皇室でも実際に現れている。

 

眞子さまの新型皇族愛(コンフルエント・ラブ) 

 英国の社会学者アンソニー・ギデンズは、サラリーマンと専業主婦からなる近代家族やロマンティック・ラブの理想は崩壊する傾向にあると指摘した。そのうえで、新しい愛の形態をコンフルエント・ラブと呼んだ(『親密性の変容』)。

2022.04.28(木)
文=森 暢平