地道に探す自分の“箱入り娘”が役作りにつながっていく

――聡子は喜びも悲しみも経験するわけですが、演じているときはどのような思いになるものでしょうか?

 私の感覚としては、聡子ちゃんが苦しければやっぱり私も苦しいし、聡子ちゃんがうれしいと私もうれしい! という感覚なんです。結びついている存在、とでも言うんですかね。

――本作に限らず、どの作品でも登場人物と心が一体になるのですか? 

 役作りというか、組み立てる作業のときは、いつも自分が実感できるところまで持って行くようにしています。彼女の苦しみを頭じゃなくて、ここ(心)が痛くなる感覚として感じられるようになるところまで最低限持って行かないと。実感が持てて、初めてそこで心を動かせるようになるので。けっこう地道に、自分の中で分かる感覚を探し続けます。地味な作業です、とっても。

――いつも台本を見ながら考えるんですか?「この人はなぜこういう行動をしたんだろう」と。

 台本にはいろいろ書いてあるんですけど、台本に書いていないところを逆にいろいろ作っちゃっています。「この子はどんな子どもだった、どういう遊びが好きだった、お菓子はこれが好きで……」とか。楽しいですし、考えることが実感につながれば良いなと思っていて。

 聡子にしても、時間がすっ飛ばされて、30歳の聡子がいきなり目の前に来るよりは、その子の人生がきちんとあったほうがいいなと思うんです。なので、自分の中の箱入り娘じゃないですけど、本当に大事に、大事に、していっていますね。

2022.03.19(土)
文=赤山恭子
撮影=深野未季