世界で初めて「人工雪」を作ったのは日本人だった
熱狂の中、幕を降ろした冬季北京五輪。スキー競技の会場である北京の北西部に位置する張家口エリアは本来、雪がほとんど降らないエリア。そう、今回の五輪は「人工雪」によって支えられたスポーツの祭典だったのだ。
世界で初めて「人工雪」の結晶が生まれたのは、実は日本。雪の博士と呼ばれる中谷宇吉郎が「雪の本質を知りたい」一心で人工雪製作装置を作成し試行錯誤を重ね、1936年、初めての人工の雪結晶が誕生した。それから85年、現在のスキー場などで使用されている人工降雪機や造雪機など、さまざまな技術が生まれていった。
そして、その人工の銀世界の上で、華麗に宙を舞い、雪原を駆け抜けたのが、多くのアスリートが信頼を寄せるオーストリアのスキーブランド「FISCHER(フィッシャー)」。こちらも1924年の創業以来、「雪」と生きる人々をサポートし、「雪」とともに生きてきた。「雪」に向き合い続けたメーカーだ。
そんな中谷宇吉郎の業績を振り返り、「雪とは何か?」を学ぶトークセッションが2022年1月16日、中谷の故郷・石川県加賀市片山津でフィッシャーの協賛のもと開催された。
トークセッションのテーマは「雪の教室」。「中谷宇吉郎 雪の科学館」古川義純館長と、中谷氏を敬愛してファンジン「イグアノドン」を創刊した明貫紘子編集長、フィッシャー事業責任者の小田島 賢氏が登壇し、雪と中谷宇吉郎、そしてフィッシャーとの豊かな関係を語りあった。
「人工雪」が世界で初めて誕生した日本は「天然雪」にも恵まれた世界的にも有数の雪国。東京大学理学部を卒業し、理化学研究所であの『吾輩は猫である』(夏目漱石著)にも登場している寺田寅彦氏に師事。1932年に北海道大学理学部に教授として赴任し、雪の魅力に惹かれていくこととなる。
2022.02.23(水)
文=CREA編集部
写真=前川祐介