「星のや東京」では伝統的な和のしきたりを踏襲し、玄関では靴を脱いで上がります。

 イグサの香りと畳表の感触が直接感じられる館内でのプログラムや、朝の澄み渡る空気の中で東京の冬の寒さを楽しむアクティビティなどが目白押し。慌ただしい暮らしの中で心身ともにリセットし、冬の時季を堪能する滞在をご案内しましょう。


身体を温め免疫力をつける2泊3日の「深呼吸養生」

 「星のや東京」では、都心の日本旅館で養生する2泊3日のスパプログラム「深呼吸養生」を2018年から展開しています(1人税サ込・宿泊料別177,870円)。

 それは、呼吸を調えることによって心身のバランスを整える習慣を身につけるためのプログラム。2020年9月からは、Withコロナ時代に沿うべく「肺機能を強化する」「体温を上げ、免疫力をつける」という2点に着目し、内容の一部をリニューアル。

 効果的に下半身を鍛える「パワーウォーク」、翡翠(ひすい)を使ったスパトリートメントや、ストレッチを行いながらの温泉入浴、免疫力を高める食事が加わりました。

「深呼吸養生」滞在の流れ

1日目
16:00~コンサルテーション
16:30~ボディリメイク
19:00~特別夕食(豆乳鍋)
20:30~スパトリートメント

2日目
7:00~パワーウォーク(希望者のみ)
8:00~深呼吸ストレッチ
9:20~軽朝食
10:00~香りのブレンド体験
12:00~オリジナルランチ
14:15~入浴法のご案内
14:30~貸切温泉
15:00~スパトリートメント
19:00~夕食(Nipponキュイジーヌ ~発酵~)

3日目
6:45~天空朝稽古(希望者のみ)
9:00~朝食
11:00~アフターコンサルテーション

 1日目の「ボディリメイク」は、多くのアスリートに支持されているR-body project所属のコンディショニングコーチが担当。呼吸や身体の状態を確認したうえで、スポーツ医学的根拠に基づいたパーソナルトレーニングのプログラムを組み、一人ひとりの身体にアプローチします。

 呼吸に関わる身体の使い方を意識し、深呼吸ができるようになると、体幹も自然と安定。2日目の「深呼吸ストレッチ」では、身体の隅々まで空気が行き渡り、心が調う感覚を得られるでしょう。

 スパトリートメントでは、温めた翡翠や、蒸し上げた季節の植物を練り込んだ葉玉(ようぎょく)を使い、心身の緊張をやわらげ、安心感のある寛ぎへと導いてくれます。

 地下1階のダイニングで提供される夕食は、発酵食品とフランス料理の技法を融合させた「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」。冬のメニューには「福-ふぐ」「石-五つの意思」「時-ゆり根」「層-蟹」「和-鴨」……と、その皿のテーマを示す漢字一文字と素材だけが記され、イマジネーションをかきたてます。

 シグニチャーの「五つの意思」は、日本料理の5つの味「酸・塩・苦・辛・甘」を表現した料理を石(オニキス)の上にのせて提供する前菜。この日は、塩麹でマリネしたニシン、隠し味にカピ(タイの発酵調味料)を使ったスープ・ド・ポワソン、豆酩(とうべい:豆腐のもろみ漬け)で風味付けしコニャックでコーティングしたレバーペーストなど。

 腸内環境を整え免疫力の向上に役立つといわれる発酵食品が、すべての料理に使われています。ワインペアリング(11,979円~)で、さらなる味覚の冒険を楽しむのもおすすめ。

 都心の一等地で天然温泉を堪能できるのも「星のや東京」の大きな魅力。最上階の17階には、地下1500メートルから湧き出る天然温泉「大手町温泉」の湯を引いた露天風呂と内風呂があります。

 泉質は、含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉。“太古の海水”とも称される塩分濃度の高い温泉です。

 「深呼吸養生」では、滞在2日目の午後、貸切りで利用。関節や手足の末端を動かすオリジナルの入浴法を教えてくれるので、温泉の中で深呼吸を意識しながら全身を動かし、身体の深部まで温めて免疫力を底上げしましょう。露天風呂ではフローティングポールを使い、空を見上げながらゆっくりとした午後のひとときを。

 「香りのブレンド体験」は、深い呼吸により心身が調った状態で、嗅覚を研ぎ澄ませていくアクティビティです。

 植物から抽出したエッセンシャルオイル(精油)の種類や特性を知り、12種類の精油から好みの香りを選び合わせ、世界にひとつだけのブレンドオイルを創る体験は、自分の中にある無意識の領域を刺激するもの。

 日常生活に戻ったあとも、このブレンドオイルを使って深呼吸をすれば心をリセットできるはず。

 2日目の昼食は、30種類以上の季節の野菜を用いて作る、彩り豊かな24の小皿料理と、生姜を使ったスープのワンプレート。どんな野菜がどのように使われているのか、あえて説明はされないので(実はお膳の中にメニューが隠されている)、五感を開放してゆっくり味わってみましょう。

 カクテルフランコ、チーマディラーパ、カリフローレ、シャドークイーンといった新顔野菜もふんだんに使われ、調理法や味付けもさまざま。野菜だけでこれほど変化に富んだ味わいが楽しめるとは驚きです。お腹も気持ちも十分満たされながら食後感は軽やか。理想のランチの形がここにあります。

2022.01.15(土)
文=伊藤由起
写真=橋本 篤