土地の実り、風土から生まれたものを集めたショップ「十三時」

 坂本さんは山伏や創作活動に加えて、自身のショップ「十三時」で自然と人との関わり合いで生まれたアイテムを扱っている。

「ここは歩いて五分も行けば食べ物があり、春だとこごみ、ふきのとう、秋になるときのこが採れ、知識と技術があれば自然の恵みを味わえるのが楽しいんです」と話す。

 店では、月山山麓に自生するイタヤカエデの樹液を自らが採取し8時間煮詰めたシロップやふきのとう味噌など、土地の滋味深い味わいを販売。

 そのほか、アロマセラピスト・フレグランスコーディネーターの山野辺善子さんが自身のアレルギー改善のために学んだ知識や技術をもとに作られたライフスタイルブランド「yes.」のスキンケアアイテムやデザイン会社「アカオニ」と制作したトランプなど、心身に癒しをもたらしてくれる品々に出合える。

「山形での生活は8年目になりますが、自然と人が関わりつむいできた文化が色濃く残る土地で暮らしていると自分を取り囲んでいる社会や物事に対して、それまでの生活では無かった視点が持てるようになったと感じます。

 生まれ育った千葉を出てはじめて故郷の良さに気がつけたように、いつもと違う角度で物事をみてみれば、気がつけなかったその土地の自然や土地に息づく文化の良さに気がつけるかもしれません。それは自然豊かな地域であっても、東京のような都会であっても」

 山暮らしでの様々な経験で身についた技術や感性が、坂本さんのこれからの表現やものづくりにますます映し出されていく。

坂本大三郎(さかもと・だいざぶろう)

1975年、千葉県生まれ。現代美術ギャラリーで働いたのち30歳の時に山伏修行に参加。山伏への興味が高まり2013年に山形に移住。春には山菜を採り、夏には山に籠り、秋には各地の祭りを訪ね、冬は雪に埋もれて暮らす。著書に『山伏と僕』(リトルモア)、『山伏ノート』(技術評論社)がある。美術作家として「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ」(2014、2016、2018)「瀬戸内国際芸術祭」(2016)「石巻リボーンアート・フェス」(2019、2020)「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」(2021)などに参加。西川町にてショップ「十三時」を営む。

十三時

所在地 山形県西村山郡西川町睦合丙218-1
営業時間 11:00~17:00
定休日 不定休
https://13ji.base.shop
毎月の営業日はインスタグラムで確認を https://www.instagram.com/13ji_/

2021.12.29(水)
文=CREA編集部
撮影=志水隆