台風は温かい海面からもらう水蒸気などによって発達します。日本付近まで北上すると海面の水温が下がるので、海からもらう水蒸気が減って衰弱しますが、北から寒気の影響が加わると、寒気と暖気の境目で前線を伴う温帯低気圧に変わります。

 台風と温帯低気圧の違いはその構造や発達するメカニズムだけで、中心気圧や風の強さで区別しません。温帯低気圧は上空の西風や気圧の谷(気圧の低い部分)などの影響で発達し、台風が温帯低気圧になってからさらに発達することもよくあるのです。

 温帯低気圧になると風の強い範囲は台風だったころより広がり、大雨や竜巻などの突風の危険もあります。このため、嵐が完全に去るまでは気をつける必要があるのです。

 

天気にまつわる言い伝えのウソホント

「空を見て天気を予想できるようになりたい」という声を聞くことがあります。空や雲を見て天気の変化を予想することを観天望気といいますが、少し知識があれば誰でもできるものなのです。

 観天望気には古くからの言い伝えが多く、動物の行動を見るなどちょっと科学的根拠のあやしいものもありますが、雲や空を観察する言い伝えについては科学的な裏づけがあって信用できるものが多いです。代表的なのが「太陽や月に光の輪がかかると雨」というもので、この光の輪は、うす雲(巻層雲)が出ているときのハロです。

 この観天望気が生まれたのは、西から低気圧が近づいているときは高い空から湿って、巻層雲が現れやすいため。低気圧が来ていないときでもハロが出ることはあるのですが、ハロが出てからだんだん雲が厚くなっていくと、巻層雲から高層雲、乱層雲と変化して雨が降ることが多くなります。

 雲の変化に気をつけると、もっとうまく天気の予想ができるはずです。

雲を見れば天気の急変を予想できる

「天気予報があれば観天望気はいらないんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。しかし、現代の技術でも積乱雲は正確な予測が難しいため、観天望気で天気の急変を察知するのが有効なのです。

2021.12.24(金)
文=荒木健太郎