台南にオープンした可愛らしい布バッグのお店
古きよき風情が漂う台南。路地に足を踏み入れると、趣のある古刹や古民家が次々と現れます。そんな街に2020年、オープンしたのが「錦源興」です。
中正路と西門路の交差点近くの路地を入ったところにあり、白く塗られた三階建ての老家屋がお店になっています。
迎えてくれたのは創業者兼デザイナーの楊子興さん。楊さんによれば、この一帯はかつては繁華街であり、日本統治時代には近くに「宮古座」という劇場がありました。
そして、戦後はこの路地にもチャイナドレスの店や舶来品を扱う店などが並んでいたそうです。
その賑わいは過去のものとなってしまいましたが、やや寂れた独特な風情は、若者たちの目には魅力的に映り、最近はカフェやブランチの店などができています。
楊さんは以前、台中でプロダクトパッケージやロゴのデザインをしていたと言います。
故郷の台南に戻ってきたのは数年前。曾祖父の張相さんは1923年に、神農街で布地の染織や輸入を行う「錦源興」を創業。その後、二代目、三代目も布問屋を営んでいましたが、産業構造の変化により需要が減り、2012年に閉業しました。
そして、楊さんは家族の伝統事業を継いでいこうと一念発起。布バッグや生活用品という新しい形でブランドを再生したのでした。
壁には台南の特産品や郷土文化をモチーフにした布バッグが並びます。中にはカラスミやトロピカルフルーツなどのほか、生活の中でよく見かけるアイテムや保護鳥類をモチーフにしたものも。
柄は全部で約30種あり、中にはちょっと見ただけでは何を表現しているのか分からない、ひと捻りあるユニークな柄もあります。
「自身の暮らしの中にあるモノ、すぐ身近にあるモノの背景を知ってほしい」と語る楊さん。
街歩きの中で面白いものを見つけたら、それに関するストーリーを掘り起こし、デザインを練ります。こうして生まれた図柄はどれも個性的で面白く、しかもセンスの良いものばかり。
布バッグ以外に、同じ柄を用いたマグカップやコースター、ミニタオル、帽子など、生活用品や文房具も販売しています。
なお、建物の上階はギャラリースペースとなっており、狭くて急な階段を上ると、二階にはオリジナルの布地、三階には台湾人クリエイターの作品があります。
古い建物自体も味わい深いので、台湾との往来が可能になったら、ぜひ訪れてみてください。
ちなみに、公式オンラインストア(中国語のみ)やグローバル通販サイト「Pinkoi」(日本語あり)を利用すれば、日本からも購入できるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
2021.11.09(火)
文・撮影=片倉真理