動画配信サービスの台頭は歓迎

――佐久間さんの「強み」とは、具体的にはどんなところでしょうか。

佐久間 例えばラジオの場合だと、最初の1年間は、お笑いや芸人さん、収録の裏話などをしていました。リスナーはただのおじさんの私生活には興味ないだろうと思って(笑)。2年目の途中から、コロナ禍で何も起きないこともあって、普通にプライベートの話もするようになりましたが。

 それと同じで、YouTubeでも視聴者を獲得するために、まずはテレビプロデューサーならではのコンテンツを作ろうと思ったんです。芸人さんたちが出演するテレビっぽい企画を中心に作れば、観に来てくれる人は多いだろう、と。いま登録者数が20万人なので、30万人を超えたら、実験的な企画にも挑戦してみたい。テレビで培ったものとYouTubeでしかできないものの間で、ちょうどいいバランスを探そうと思っています。

――YouTubeの他にも、Netflix、ABEMAなど動画配信サービスが台頭しています。

佐久間 視聴者としてはめちゃくちゃ嬉しい。サブスクのおかげで“視聴人生”が充実しています。僕は「作り手」というよりは、「ソフトの受け手」という感覚の方が強いので、好きなものを死ぬまで観続けたい。番組作りはあと10年くらいでしょうね。

――「作り手」としては、どう感じていますか?

佐久間 単純に企画を持ち込める場所がいろいろあるのはいい状況だと思います。ただ、Netflixとか大手はバジェット(予算)も大きいと思いますけど、新興の配信サービスだとテレビの深夜番組よりちょっといい位だったりするし。テレビ東京は全然バジェットがないから他局が羨ましかったけど、フリーになって他局でも番組を作り始めて、そこまで大きな差があるわけではないな、と。テレビ市場全体がシュリンクしていますからね。

 逆に、テレビ東京で少ないバジェットで番組を作る方法を学んでいたから、そのノウハウが役立っています。いま、テレビ業界で潤沢な予算があるのはNHKくらいじゃないですか? NHKは日本国民のほとんどが加入していて、受信料もかかる。まさにサブスクじゃないですか。

「僕が就活したのは“氷河期”真っただ中で…」テレビプロデューサー・佐久間宣行が“天職”に就くまでの「意外な道のり」 へ続く

2021.10.24(日)
文=池守りぜね