忘れ去られた彼女たちの名を思い出すことは、未来におとずれる多くの聡明な女性たちに向かって、現在から大声で叫ぶことだ。あなたはそこにいるのだと。わたしたちの応答は、それらの名が歴史に根をはるための豊かな土を育むだろう。「哲学」の肘掛け椅子にどっしりと腰を据えた「白人男性」の虚像を吹き飛ばしてみると、椅子のうしろには知の大木が立っている。その木陰に多様な人びとが集い、問いを共有する姿をわたしは想像する。
巻末の〈その他の哲学の女王たち〉を見て、気になる名前を調べてみるのもいい。彼女たちはたしかにいたし、その問いはいまも震えているのだから。
Rebecca Buxton/オックスフォード大学大学院で哲学の博士課程を履修中。専門は政治哲学と強制移動。
Lisa Whiting/ロンドン大学バークベック・カレッジで政治学などの修士号を取得。
めぐみあゆ/1996年生まれ。同志社大学大学院で現代アメリカ文学を専攻、博士課程に在籍するほか、バンドでの音楽活動も。
2021.07.14(水)
文=惠 愛由