お茶道具を籠や箱に詰めて、外に出かけませんか?

 風がそよぎ、やわらかな光が舞うなか、お茶を点て、お菓子をつまむ。茶籠&茶箱の小さな宇宙から至福のおタイムの始まりです。

 お茶道具の基礎知識と手軽に野点にチャレンジできるセットをご紹介。今年は“野点デビュー”してみませんか。

» もっと野点を楽しみたいなら、嘉門工藝の茶籠・茶箱にチャレンジ(7月21日公開)


お気に入りを組み合わせて幸せなお茶時間を

 お茶を点てる道具一式が小さく収まった茶箱。古来、茶の湯の世界では、野外でお茶をたしなむ「野点」や、旅に携帯するために使われてきた。

 日々の生活のなかに、この茶箱の楽しみを提案する「嘉門工藝」の村瀬亜里さん。

「箱や籠、袋にでも、お気に入りを詰めて、広げたところが“茶の場”になります。近所の公園へ、旅先へ。家のリビングでもいいですね。京都では生菓子を買い、帰りの新幹線でお抹茶と旅の余韻を楽しんだり、お見舞いに病室で点てて差し上げたり。留学するお子さんに持たせる方も」

 本来、道具の取り合わせ、見立ては茶人の腕の見せどころ。センスと知識が試されるとか。

「いえいえ、堅苦しく考えず、ご自分のお気に入りを自由に組み合わせてみましょう。愛着もわき、道具のストーリーも披露できて、さらにお茶の時間が盛り上がります」

【お茶道具 用語集】

1:茶籠・茶箱
野点や旅先で用いる茶道具一式を収める籠や箱。千利休が最初に使ったとされ、歴史は古い。自由な発想の使い方「見立て」で遊べる楽しさが人気の秘密。

2:茶碗
主に陶器の器を使う。ガラス器やカフェオレボウルなどを茶碗としても。季節によって使い分けたり、趣味を表したり、テーマを伝えるための重要なアイテム。

3:茶筅・茶筅筒
抹茶を点てる道具。10センチほどの竹筒の半分を細く割り、先を曲げたもの。茶筅筒は茶箱や茶籠に壊れやすい茶筅を収納するための筒状カバー。曲物や漆が多い。

4:棗・茶入
抹茶を入れる茶器。茶の湯の世界では、棗に代表される木製茶器に対して、陶磁器製を「茶入」と呼ぶ。茶籠や茶箱用は軽く持ち運びやすい木製漆塗りが適する。

5:茶杓
抹茶をすくうための細長いスプーン。竹製が多いが、木製、金属製、ガラス製も。茶籠や茶箱で運ぶ場合は、布製の茶杓入れに収納して保護することが多い。

6:茶巾・茶巾筒
お点前中に茶碗を拭き清めるための布。晒した麻布が多く用いられる。濡らして絞って使うため、筒や箱に入れ、ほかの道具を濡らさないようにする。

7:建水
茶碗を清めたり温めたりしたときに使った湯水を捨てる器。「こぼし」とも呼ばれる。陶器、磁器、曲物、唐銅などの金属器が多い。最近は軽いアクリル製も。

8:振出
茶箱や茶籠で、金平糖や霰、甘納豆など小粒のお菓子を入れる陶器やガラスなどの小型の菓子器。お菓子を取り出すときに「振り出す」ことから、その名がついた。

2021.07.20(火)
Text=Mika Kitamura
photographs=Yosuke Suzuki(Erz), Ryota Sawaki〈cut out〉(Erz)
styling=Mika Sawairi

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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