イギリス王室とは事情が違う部分もありますが、日本で今起きている秋篠宮眞子さまと小室圭さんの「結婚問題」がこれほどこじれているのも、小室さんが皇室に対する理解と覚悟を欠いたまま、婚約をしてしまったことにあると思います。その点では、小室さんはメーガン妃やダイアナ妃と同じような問題を抱えているともいえるのです。

皇太子と結婚し、スウェーデンの王室に入ったダニエル王子

 私には小室圭さんやメーガン妃の事がニュースになるたびに思い出す王子がいます。それはスウェーデンのヴィクトリア皇太子と結婚したダニエル王子です。彼は、小室さんやメーガン妃とは異なり、スウェーデンの王室に入る「意味」を理解し、覚悟を決めた人物でした。

 スウェーデンでは男子にしか王位継承権が認められていませんでしたが、拙著『立憲君主制の現在』(新潮選書)でも詳しく触れておりますように、1979年に王位継承法が改正されたことにより、ヴィクトリア王女が正式に皇太子となりました。現代のスウェーデンで初の女王になることが決められたヴィクトリア皇太子は18歳から皇太子としての公務が始まりましたが、極度のプレッシャーから拒食症を患いました。その治療の過程で出会ったのが、彼女のトレーナーを務めたダニエル王子です。

 

7年かけた「カエルの王子様」結婚までの長い道のり

 当時のダニエル王子は爵位を持たない一般人であり、経済力も決して十分とは言えませんでした。マスコミも彼のスウェーデン語の訛りを「田舎の少年」と表現し、顔がカエルに似ていることから「カエルの王子様」と呼んでいたのです。国民からも未来の女王の結婚相手にはふさわしくないと批判を受けました。ヴィクトリアの父である現国王のカール16世グスタフも、ダニエルさんについて初めて王女から話を聞かされた時には激怒のあまり、無言で食事の場から立ち去ったと言われています。

 それでも結婚の意志が強かった2人に国王は、ダニエル王子が王室にふさわしい人物になれば結婚を認めるという条件を出しました。この国王の提案を承諾し、「ダニエル改造計画」として彼は徹底的に語学や教養を学んだのです。スウェーデン王室の伝統や歴史、王室の一員としてのマナーや立ち振る舞いの学習だけでなく外見のイメージチェンジも求められました。さらに英語・フランス語・ドイツ語の習得と訛りがあったスウェーデン語についても指導されました。

2021.06.29(火)
文=君塚直隆