日本でも天皇陛下のことを幼少期にご家族が徳仁親王に由来して「ナルちゃん」と呼んでいたことがありました。「リリベット」もそれに近いといえます。今回の騒動を日本の皇室で例えるなら、眞子さまと小室圭さんが結婚をし、自分たちの子どもに「美智子」と名付け、ミッチーと呼ぶ、ということになるのではないでしょうか。

 身勝手に王室を離脱し、王室批判を続けている夫妻が長女の名付けにそんな思い出が詰まった愛称を使用したことに英国民から反発が起きているのです。ましてや、長年連れ添った夫・フィリップ殿下を4月に亡くしたばかりの女王に対し、英国内では深い同情と、悲しみの中で公務を全うする女王への敬愛が集まっています。そうした状況の中で、この名づけ問題が発生したわけですから、英国民が怒るのも無理はありません。

 

王族の名前を使用するときは、お伺いをたてるのが通例

 仮にリリベットという特別な愛称ではなく「エリザベス・ダイアナ・マウントバッテン=ウィンザー」だったら、ここまでの批判にはならなかったかもしれません。ただ、いずれにしても王族の名前を使用するときは、時の君主にお伺いをたてるのが通例です。ヘンリー王子とメーガン妃が、しっかりとエリザベス女王に許可をとったのかどうかは夫妻側と王室側で見解が食い違っており、はっきりとしていません。

 ヘンリー王子とメーガン妃の騒動が続く理由の一つは、いくら彼らが「経済的独立をする」と言っても、その経済的独立を果たすためには、王室という肩書に頼って稼ぐしかないからでしょう。メーガン妃は、かつては女優として活動していましたが、その経歴は決してオスカー女優並の華やかなものとは言えません。女優として、彼女が経済的独立を獲得するだけの収入を得ることはほぼ不可能といっていいでしょう。

 ただ、アメリカという国は「ロイヤル」が好きです。移住してきた2人をもてはやしたり、近づいてくる人たちも多い。だからこそ、人気司会者オプラ・ウィンフリーとの対談やSpotify、Netflixとの大型契約も実現できたのではないでしょうか。英国にいたころと違い、王室での慣習にとらわれず米国で自由に振る舞える。ですから、ある意味では、こうした騒動が米国発で起きているのも当然と言えば当然なのです。

2021.06.29(火)
文=君塚直隆