つい比較したくなる、エドワード8世の「王冠を賭けた恋」

 今のヘンリー王子とメーガン妃を見ていると、「王冠を賭けた恋」とも言われたエドワード8世とつい比較したくなります。1936年、エドワード8世は王であるよりも当時人妻であったウォリスとの結婚を選び、在位期間わずか325日で退位。王室を捨て、フランスのパリ郊外でウォリスと密かに暮らす道を選びました。王室からの手当ては支給されていましたが、英国に戻ることはなくひっそりとフランスで生涯を終えました。

 エドワード8世のように、かつては、王室を出て行った者は、あれこれ言うべきではないという“常識”が離脱する側にも備わっていた気がします。しかし、今のヘンリー王子とメーガン妃を見ていると、「何でもあり」になってしまっている。もちろん、王室に対する敬意も時代とともに変化していますし、当時と今では時代性が異なるので、単純に比較することは難しいかもしれませんが、エドワード8世が王室に関する愚痴や批判を言うことはありませんでした。一個人としてこれ以上は言ってはいけないという節度があったように感じます。

 

王室に入るという覚悟がなかったメーガン妃

 なぜメーガン妃は「何でもあり」に振舞うのか。それは、王室に入る覚悟とそのための教育の時間が足りていなかったからではないでしょうか。メーガン妃は2016年に知人の紹介でヘンリー王子と出会い、翌年の2017年11月には婚約、女優を引退しました。そして、その半年後に結婚式を挙げたという、まさに電撃結婚でした。メーガン妃は当時36歳。婚姻歴があり、アメリカでは女優として活動していました。それゆえに王室の空気を窮屈に感じたかもしれません。

 かのダイアナ妃もわずか19歳でチャールズ皇太子と婚約しています。それは皇太子と恋仲になってからわずか1年のことでした。ダイアナ妃も17世紀から続く貴族の家系の生まれでしたが、ダイアナ妃が幼い頃に両親は離婚。貴族としての教養を身につけていたわけではありません。王室に入って初めて、その大変さを、身をもって実感したのではないでしょうか。

2021.06.29(火)
文=君塚直隆