テレビのコロナ報道は人びとに自粛を求めることを目的としているため、重症者の増加や医療現場の逼迫、変異株のリスク、感染経験者の悲痛な声など、安心させる情報よりも不安を強める情報に偏りがちです。そのため、とくに高齢者ではコロナを怖がる人が多く、かえって心身にマイナスの影響が出ていると指摘されています。臨床医の話を聞くと、「コロナが怖い人には、テレビ(とくにワイドショー)は見るなと言っている」という人が少なくありません。

(2)親しい人とコミュニケーションを取りにくい状況が続いている

 ストレスや不安を和らげるには、家族や友人など親しい人に話を聞いてもらうことが大切です。しかし現在、コロナ禍のために外で人とおしゃべりしたり、ランチやお酒を飲む機会が限られています。高齢者ではコロナを恐れるあまり、孫や子どもと長い間会っていないという人もたくさんいます。人とあまりしゃべらないとうつに陥りやすいだけでなく、認知機能も低下しやすくなります。ビデオ通話や電話でもいいので、定期的に家族や知人とコミュニケーションを取るようアドバイスする医師が少なくありません。

(3)外に出ることができず、運動する機会が減っている

 複数の研究で、身体活動や運動がうつ病や不安障害の予防・治療に効果的であると報告されています(COMHBO「うつと運動」(医師))。しかし、ステイホームやリモートワークが呼びかけられているために、散歩や通勤の機会が減って運動不足に陥っている人が多くなっています。運動不足になると昼間疲れないので、夜、不眠に陥りやすくなり、メンタルにも悪影響を与えます。また、運動不足は糖尿病のリスクを上げますが、糖尿病の人はうつ病になりやすく、うつ病の人も糖尿病になりやすいことが知られています(e-ヘルスネット「糖尿病とこころ」)。身体の不健康は、心の不健康にもつながっているのです。

(4)緊急事態宣言や時短要請で仕事や収入が減った

2021.06.18(金)
文=鳥集 徹