また他方で、首都圏での「ブラックモンブラン」の知名度はまだまだだ。

 私が知る限りでは、サミット、ヤオコー、ライフなどのスーパーや専門店などで購入できるが、皮肉にも躍進のきっかけとなったコンビニエンス・ストアでは、九州以上の販路開拓ができていなかった。

 今回の「ブラックモンブラン」の関東本格進出は、そんな状況を変える可能性があると思っている。注目すべきは、昨年10月に買収した埼玉県・幸手のアイス製造会社スカイフーズの存在だ。

 スカイフーズは、コンビニエンス・ストアや大手アイスメーカーのオリジナルアイスの製造を主にしており、小粒の一口アイスの製造設備があるのが強み。日本で小粒のアイスを製造できる設備は、私が知る限り、森永乳業の関連会社と、このスカイフーズしか今のところ存在していない。製造拠点を増やし災害等のリスクを分散させる目的のあるこの買収が、業界内で高い注目をうけているのは、こうした背景があるからだろう。

 商品開発において、大手企業が真似できないことをあえて行って差別化してきた竹下製菓。片方では「ブラックモンブラン」という長年作り続けてきたアイスを持ち、もう片方ではこの強みを生かしながら、買収を足がかりに商品に大きな革新を起こす可能性がある。

 今後、販路を拡大していく中で、新しい刺激を受けた竹下製菓が「ブラックモンブラン」を軸に自社ブランドや業界全体に新しい風穴を開けていく……。そんな日は、案外近いかもしれない。

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写真=筆者撮影

2021.06.15(火)
文=荒井 健治