著しく下がる自己肯定感

 俺みたいなライターが仕事を一緒にする相手は、どうしたって出版社に勤める編集者が多いわけだが、彼らはもれなく高学歴である。インタビュー後の打ち合わせで、ふと世間話になって「早稲田の教育学部だったから」「慶応だったんですけど」「一橋の経済学部でして」などと言われると、インタビューが終わったばかりだというのに続けて彼らに取材をしてしまう。「現役で合格できたんですか?」「やっぱ、幼い頃から頭が良かったんですか?」「塾はどこに通ってたんですか?」「1日、何時間くらい勉強してたんですか?」と目を血走らせて詰め寄り、そんな自分のみっともない姿にハッとして猛烈に恥ずかしくなる。

 高学歴の人間と対面すると、自己肯定感も著しく下がる。「ここ、こういうふうに直しませんか?」と原稿の修正を提案されただけで、「頭が悪いと思われただろうか?」「大学に行けなかったヤツが書く文章はひどいんだろうな」とオロオロかつヨレヨレになってしまう。こうなってくると、仕事の少ない月があったり、原稿に行き詰まったりすると「学歴がないから」だと思い込む。その前にライターとしての偏差値が低いだけなのだが、それに気づくまでに時間が掛かって「気づかないのは、学歴がないから」と悶々がエンドレスでループする。

 そんな人間だからこそ、『ドラゴン桜』は刺さりに刺さりまくった。

平均偏差値36の生徒を東大へ

 物語の舞台は、平均偏差値36の私立龍山高校。24億円の負債を抱えた同校の倒産処理を務めることになった弁護士・桜木健二(阿部寛)は、入学希望者を増やして経営再建を図ろうとする。その目玉としてブチ上げたのは、日本の大学の最高峰「東京大学」合格を掲げた特別進学クラスの設立。集まったのは、矢島勇介(山下智久)、水野直美(長澤まさみ)、緒方英喜(小池徹平)、香坂よしの(新垣結衣)、小林麻紀(サエコ・当時)、奥野一郎(中尾明慶)の6人。彼らに対し、桜木は破天荒な授業を行っていく。

2021.05.01(土)
文=平田 裕介