●コロナ禍を転じて福となす
七里ケ浜や表参道など日本だけでも8店舗、世界では19店舗を展開するオーストラリア・シドニー発のオールデイダイニング「bills」。
オーナーでレストランターのビル・クレンジャーに、“コロナ禍を転じて福となす”コツを伝授してもらった。
●とにかく続けることが大事
まず僕が言いたいのは、日本に行けないことが一番寂しいということだね。
日本は僕に大きな影響を与えた場所。食文化はもちろんだけど、日本人の謙虚さ、茶道などの、伝統工芸にも見られる細部にわたるこだわりが大好きなんだ。
完璧なものを求めながら、到達を目指さない。世界の中でもユニークな文化。洗練されたものとそうではない真逆なもの、かわいいものが同居している、そんな日本が懐かしいよ。
今、僕はロックダウン下のロンドンにいる。コロナ禍は、レストラン経営者にはかなりハードな出来事。
飲食店で働く私たちは、コミュニケーションが好き、人を喜ばせるのが好きだから、その機会をコロナ禍によってまるごともっていかれた状況には、げんなりしているよ。
ロンドンでは、私の店も含めて、いま飲食店はまるで消滅してしまったような状態で、閉店してしまう店も多い。
しかし、これまでを振り返っても、飲食業界にはアップダウンがあったよ。いい時も悪い時もあり、人生はジェットコースターのようなもの。
とにかく続けるということが大切なんだと思う。みんなで力を合わせて乗り切るしかない。
パンデミックが終われば、この状況は必ず終息するのだからね。
●地元の人を大切にする
コロナ禍が終息するまで、少しビジネスの方法を工夫する必要があるね。
billsでも、今まではやっていなかったテイクアウェイやデリバリーのサービスを始めたよ。
またロックダウン中、僕はレシピの開発に時間を使ったり、レストランチームのサポート役にまわっているんだ。
地元のコミュニティを大切にすることはとても大切なことだと思うんだ。地域の人とコミュニケーションをとることは、乗り切る力にもなる。
また全世界のbillsは、その場所からインスピレーションを受けてレストランの空間をデザインしているから、ローカルのコミュニティはとても大切だね。例えば、七里ヶ浜はシドニーのようなビーチライフが感じられたり、銀座は日常からエスケープしたグラマラスな空間に訪れることができる。
私の住むチェルシーでも、それこそ人生をかけて作ったレストランを営む個人店主がたくさんいて、いまは彼らと今後のことについてよく話し合っているよ。
2021.05.06(木)
文=CREA編集部