参ノ型:アニメスタッフ泣かせだった炭治郎の衣装
ここからは、アニメに関わる小ネタをコソコソ紹介していこう。アニメ『鬼滅の刃』で絶賛されているのは、アニメーション制作スタジオ「ufotable」による美麗・流麗な映像表現。特にアクションシーンのダイナミックなカメラワークと画面の密度には、圧倒させられる。
ただ、外崎春雄監督や各スタッフが『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の入場者特典「煉獄零巻」やパンフレット等のインタビューで語っているのは、「炭治郎の着物の市松模様」を描く難しさ。というのも、戦闘中に動き回る際に、着物ははためき揺らぎ、そのたびに模様をすべて計算して描き込まねばならなかったから。
炭治郎の同期である我妻善逸も柄物の着物を着ており、スタッフ陣は相当苦労したそうだ。
また、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』に登場する猗窩座も、全身に入れ墨のような模様が入っているため、大変だったとのこと。アニメを観返す際など、ぜひこの「着物の描写」にも、目を向けていただきたい。
肆ノ型:原作者と同じ資料を参考にアニメを制作
とにかく随所にこだわりが光るアニメ『鬼滅の刃』だが、外崎監督が「煉獄零巻」内で語ったところによると、参考資料もわざわざ原作者とそろえたそう。「吾峠先生が参考にしている資料を教えていただきました。同じ資料を使って、本編制作を行っています」と語っており、原作へのリスペクトがすさまじい。
ちなみに、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』では、列車のどの部分にどの乗客が座っているかを入念に打ち合わせたそう。カメラをどこに置くかによって、どの観客が映るかを徹底的に洗い出し、反映させたという。
観客にはわからない部分までも、妥協せずにひとつずつクリアしていく――。アニメ『鬼滅の刃』が爆発的な支持を受けた要因には、こうした陰の努力もあるに違いない。
また、第1話の象徴的な雪山のシーンなどは、外崎監督が実際に栃木の雪山でロケハンを行い、写真資料を作成したらしい(滅茶苦茶寒かったそうだ)。
伍ノ型:TVアニメでは“異例”となる作曲方式を採用
アニメ『鬼滅の刃』といえば、LiSAの楽曲も素晴らしいが、梶浦由記・椎名豪によるサウンドトラックも名盤。そして実は、音楽の付け方にも特徴があるのだ。
TVアニメでは、「こういうシーンにこういう曲が欲しい」というリクエストが書かれたシートをもとに、作曲家が音楽を制作するのが一般的。しかし本作では、「フィルムスコアリング」という方式を採用。
これは、映像に合わせて音楽を付けていくアプローチであり、ものすごくざっくり言うと、曲を使いまわすのではなく、毎話毎話新規で曲を制作するということ。映画では主流とのことだが、TVアニメではかなり珍しいそうだ。
『鬼滅の刃』は作品の構造上、モノローグがかなり多い。そのため、シーンに音楽をハメる形式だと、どうしても無理が生じる部分もあるのではないか。映像・音・演技のトータルバランスをそろえ、観客にカタルシスを感じさせるために、スタッフ陣はあらゆる手を尽くしているのだ。
2020.12.06(日)
文=SYO