理由その3 “インディ・ジョーンズ”ばりのエンタメ演出
徹底した和の作り込みをする一方で、エンタメ的な演出もあります。各地に点在する神社を訪れる必要があるのですが、国宝の三佛寺投入堂(鳥取県三朝町)も真っ青になるような、「誰も詣でられない!」ような場所に本殿があります。
よろいを背負った武士が、ロッククライミングをしたり、枝から枝を飛んでいくような、「インディ・ジョーンズ」ばりのアクションをするわけです。ツッコミどころ満載です。
ですが、プレーして楽しいのも確かで、見ている人も目が点になるような驚きがあります。「ゲームならでは」の演出もあるわけです。リアルな和の世界観だけを追うのでなく、遊び心を忘れていないのです。
そして「見た目」が映えるのもポイントです。プレーヤーは、ゲーム内を自由に歩き回り、お気に入りの景色のスクリーンショットを撮ることができます。それをSNSにアップすれば、露出は高まり、初見の人も気になります。ゲームの中身だけでなく、プロモーションとしてもよく考えられており、理想的ではないでしょうか。
初心者にも優しいゲーム
黒澤明の“息吹”を感じるゲームだけに、普段はゲームをしない人も気になるでしょう。初心者ゲーマーも遊べる? ときかれれば、「イエス」です。難易度を低くできますし、冒険中に崖から落ちたり、戦いに敗れても直前からやり直せます。ゲームを進めるヒントもあります。
ただし同作は、ゲームの推奨年齢区分を示す「CEROレーティング」で、「18歳以上のみ対象」を意味する「Z」指定のゲームです。人を斬るから血も出ますし、かなり残虐な描写もあり、悲劇的な物語も多いのもポイントです。映画も同じですが「大人のゲーム」であることは頭に入れて手に取る方が良いでしょう。
海外クリエーターが本気で作った和風コンテンツ
海外のクリエーターが作った和風コンテンツと言えば2003年公開の映画「ラストサムライ」を思い出す人もいるのではないでしょうか。同作の興行は成功しましたが、内容には賛否両論があり、辛辣(しんらつ)な評価をする海外メディアもありました。日本の新聞の映画批評でも「かなり大胆な場面設定」などと言葉を選びながらも、海外のクリエーターが作った和風コンテンツ特有の違和感を否定しませんでした。
では「ゴースト・オブ・ツシマ」も同じように、特有の違和感を感じるのかを、試してみてはいかがでしょうか。あなたが抱くゲームの価値観がガラリと変わるかもしれません。
2020.10.05(月)
文=河村 鳴紘