理由その2 “黒澤プロダクション公認”和のテイストが圧巻
そうした和風の新鮮さに加え、絶賛されたのは、ゲーム内の殺陣の表現でしょう。抜刀や相手に刀を突き立てるシーン、刀についた血をぬぐう仕草は、時代劇映画のようです。それも当然でして、同作を作ったクリエーターが巨匠・黒澤明の映画に影響を受けたことを明かしています。
興味深いのは、同作を手掛けたのが日本のゲーム会社でないこと。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)傘下の米国ゲーム開発子会社「サッカーパンチ・プロダクションズ」です。
同作のクリエーターは、影響を受けた作品に、映画「七人の侍」や「用心棒」(黒澤監督)、「十三人の刺客」(三池崇史監督)を挙げています。「Ghost of Tsushima」内にも、映画のような雰囲気でゲームが楽しめる「黒澤モード」なるものがあり、黒澤プロダクションからわざわざ許諾を得ています。本気度がうかがえます。
ゲームで大切なことは、「時間を忘れるほど楽しい」ことであるのは当たり前です。しかし、ゲームの楽しさに加え、要所でにじみ出る和の演出がそれを倍増させています。
同作は当然、刀を振るって敵と戦うことが主目的ですが、馬に乗って島を散策するだけでもワクワクします。対馬のシンボル・白嶽や、古代から知られる金田城、海に浮かぶ和多都美神社、対馬を支配した宗家の菩提寺・万松院もゲーム内に登場します。
さらに、桜や紅葉、新緑、雪景色と日本の四季を描写し、神社や秘湯などもあります。ゲームの途中には、絶景のポイントに行くと和歌を詠むシーンも用意されていて、これがまた和風感全開なのです。道中、モンゴル軍だけでなく、盗賊に出くわすあたりも、和のテイストがにじみ出ています。馬を駆って、一面ススキの平原を駆ける様は、まるで映画のワンシーン。
つまり、武士の描写と、島の景色の双方がハイレベルで融合し、明確な世界観を作りあげているのです。
2020.10.05(月)
文=河村 鳴紘