共演する女優を輝かせる力
千秋から9年後、新次郎役で玉木宏は再び、ヒロインを成長させる男に回帰した。しかも千秋よりも成長して、もはやライバルではなく、恋人を自由に泳がせて見つめているという余裕の域に。10年経過して玉木自身が様々な役を演じて成長したからであろうか。演技にもかなりの落ち着きが見られた。
玉木宏は女性の成長を助け見守る役を適切に演じると同時に、共演する女優を輝かせる力がある。バレエやアイスダンスで女性をエスコートする男性のような、ソロでも輝くし、女性とペアを組んだときは、女性を徹底的にきれいに見せる。
先日、最終回を迎えたハードボイルドなドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)では高橋一生と双子の兄弟役で、両親の仇をとるため玉木宏演じる兄は整形しているという設定。
ふたりは運命共同体としてお互いが支え合って復讐を遂行すべく行動する。このドラマで玉木宏は、ヒロインポジションでふたりの妹役を演じた松本穂香を輝かせてもいたが、女性のみならずW主演の高橋一生まで輝かせていた。
40代の玉木宏はどんな役を演じるのか?
私生活では木南晴夏と2018年に結婚。木南は俳優業を続けるうえ、パンに詳しいタレントとしての側面も持って活動していて、玉木の懐の広さのなかでのびのびさせてもらっているように感じる(あくまで勝手な想像だが)。木南は芝居が巧く、もともと好感度が高い俳優ではあったが、玉木と結婚して株が上がったと思う。
次なる玉木宏の出演作は『極主夫道』(日本テレビ系 10月11日から放送)。元ヤクザ、いま、主夫。妻の代わりにヤクザの世界で磨かれた刃物の扱いを生かして包丁を華麗に操り、キャラ弁を作る。妻のために家事を行う、強くたくましい夫。最強のキャラであるが、これでは女性を甘やかしてしまうのではないだろうか。
女性を成長させる男役で人気を持続させてきた玉木宏、40代はいよいよ甘やかす男にシフトするのか。これは時代の変化なのか。できれば玉木宏にはいつまでも女性を成長させる男でいてほしい。
2006年、千秋、2015年、新次郎。ということは、2025年から26年にかけて3度目の当たり役がまわってくるかもしれない。引き続き、玉木宏の動向を見守っていきたい。
2020.10.02(金)
文=木俣 冬