今後のコラボレーションと日本での展開について

 防疫への貢献は公的機関も認めるところ。

 国立歴史博物館における防疫の足跡を残す展示品として、カラーマスクの提供を求められているほか、10月10日の国慶節(建国記念日)紀念マスクを発売する計画も進んでいる。

 「今後はコラボレーションが続きます。10月には台湾の映画祭・金馬賞の記念デザインを出しますし、デパートの一階に入るような海外のハイブランドとのコラボも控えています。

 また、アメリカではオンラインのテスト販売なども始まっていて、今まで以上にクライアントのニーズに応えるオーダーメイド、より独自性の高いマスクを提案していくことになりそうです」

 欧米での展開と聞いて気になるのが、彼らのマスク観。未だ着用への抗議活動なども盛んなようだが、果たして……。

 「一般的なサージカルマスクに対しては、やはり抵抗感があるようですね。2020年1月、ドイツのファッション・ウィークのアフターパーティで配布した際は、彩度が高いものはクールだと捉えていて、興味を持ってもらえたという感触がありました。

 コロナ禍であれば、防疫に有効なサージカルという付加価値から、広く支持されるのではないかと思います。ただ、徴収令下の限られた生産量のなか、一定量の輸出は難しい。まずは企業とのコラボや国ごとの限定デザインなど、少量から展開していく予定です」

 となると、日本での展開にも期待が集まる。

 「実は、2020年11月に一部デザインを販売することが決定しています。2019年9月に東京ギフトショーに出展したのですが、鮮やかなカラーなのにサージカルであることに驚かれましたね。

 それから約1年。マスクが生活に欠かせない世の中になりました。どうせならサージカルを選びたいところですし、できればファッションの一部になるようなマスクを……そう考えている方は、ぜひ試してほしいですね」

 コロナ禍初期には貨幣になりうるとも言われ、その後は外交カードとなり、今では世界各地で着用の是非が問われるなど、世界情勢に翻弄され続けているサージカルマスク。

 カラーマスクの躍進は、マスクを着ける習慣のない国への普及を促進し、すでに生活の一部となっている国にとっては、ウィズコロナのささやかな潤いに。

 リーディングブランドである「CSD中衛」に、これからのカラーマスクが何になりうるかと問いかけた。

 「今後は、だんだんとコレクションアイテムになっていくのではないでしょうか。すでに香港では、絶版品が高値で取引されているようです。コラボ商品などの限定品は、蒐集の方向に進むでしょう。

 定番品に関しては、供給量が増えれば、装いの一部として楽しんでもらえると思います。日本の白マスク文化も、このカラーマスクによって打ち破れたら。化粧品メーカーとのコラボなど、日本のマーケットには、さまざまな可能性を感じています」

 マスク先進国の台湾が誇る秒殺カラーサージカル。いよいよ日本初上陸です。台湾の熱狂をあなたも体感してみませんか。

堀 由美子 (ほり ゆみこ)

ライター。慶応義塾大学文学部を卒業後、広告制作会社にて、大手メーカーの企業コピー、商品パッケージ原案等を担当。ライターとして独立後は、女性誌にて、ファッション、恋愛、占い、エンタメ等、オールジャンルの特集に携わる。2011年より台湾在住。現在、CREA WEBにて、台湾発の占い連載・悟明老師の「神鳥さん占い」「世界の空気」をお届け中。

カラーサージカルマスク
台湾での大ヒットの舞台裏

2020.09.16(水)
文・撮影=堀 由美子
写真提供=CSD中衛