入り込んで描く私と
客観的にチェックする「ふせでぃさん」の運営の私

――絵はとてもかわいい一方、ストーリーやモノローグは非常にクールでシビア。それがふせでぃ作品の特徴だと思います。たとえばアキちゃんが女子会の後に「ひとり5千円か…人の幸せを聞くだけなのに痛い出費だった」とつぶやく時に、ガッカリした表情ではなく真顔なんですよね。このクールさがリアリティだと感じます。

ふせでぃ 電車のなかってのもあるんですけど、怒ってるわけでも悲しいわけでもないんですよ。

――こうした抑制的な表現作法はどこから来ているんでしょうか。

ふせでぃ 基本の自分が虚無だからかな(笑)。悪いことがあっても「ふーん」っていう。悲しいことも「そっか」って。いわゆる悟り世代なのかな。悲しいことが起きても受け入れるしかないみたいな。税金が上がっても「そうですか」と思っちゃうところがある。ダメだと思うんですけど。だから「ほかに好きな女子ができた」って言われても「そうなんだ」ってなっちゃう。

――世代による考え方の傾向って、実際ありますよね。

ふせでぃ 正確には悟り世代ってちょっと私より下かもしれません。でも、私の世代も「抵抗しても変わらない」みたいなところがあるんです。

 今起きたことに対してどう対処するか、冷静に考えはするけど。基本は否定できないのか、変えようと思えないのか。えーと……たぶん反抗心がないんですよ。先生がそう言ったら、そのとおりにする。

――自分も含めて、そういう空気感をすくい取って描いているということでしょうか。

ふせでぃ そうなんでしょうね。私の中では「ふせでぃさん」という空想上のイラストレーター・ポエマー・漫画家がいて、私はそれを運営する人という感覚があって。

――その人格を2つに切り離した方が自由に描ける?

ふせでぃ 入り込んで描いてる「ふせでぃさん」と、それを外から客観的にチェックする「ふせでぃさん」の運営の人の両方がいる感じです。

――そんな目線で見た時、同世代の人たちに思うことはありますか?

ふせでぃ 印象としては病んでる子が多いかなと。同世代の子には「前に進んでほしい」と思っています。

――病んでいるというのは、何が理由になっていると思いますか?

ふせでぃ 閉塞的になっているからかな。他者とのコミュニケーションが苦手で、諦めていたり、めんどうくさがっている子が多いと思います。人と関わって傷つくのが嫌なんじゃないかな。

――作中にも「心を開くのが怖いんだよ」というモノローグがありましたね。

ふせでぃ 私自身は人と話すのが好きで。知らない人と話すと新鮮だし、「そんな見方があったんだ」とハッとすることがめっちゃあるんで。

 コミュニケーション推奨派です。現時点で好きなものが一致する人とだけ付き合うとか、ネットの世界だけで交流するのでは世界が狭くなる。楽なようで自分をどんどん縛って、窮屈にしていくことになるんじゃないかなと。

2020.09.15(火)
取材・文=粟生こずえ
撮影=鈴木七絵