■Q4 セロイのライバル「長家ポチャ」のモデルは?
セロイのポチャ「タンバム」のライバルとして存在するのが、韓国最大の飲食チェーン「長家(チャンガ)グループ」。梨泰院でも「長家ポチャ」を経営している。モデルとなった企業はあるのだろうか?
韓国で飲食業界のフランチャイズを行っている企業はたくさん存在するが、中でも店舗数が最も多く、業界の絶対的な強者である「ハンシン・ポチャ」。長家ポチャのモデルともいえる存在だ。
ただ、ハンシン・ポチャの創業主である白種元(ペク・ジョンウォン)氏は、ドラマの「長家ポチャ」のチャン・デヒ会長(ユ・ジェミョン)とは違って、韓国人からとても愛されている企業家だ。
白さんは、新興勢力のセロイの店を潰そうとするチャン会長とは正反対で、飲食業を希望する若者の支援に力を入れている、若者のメンター的な存在だ。保守野党の未来統合党から「白さんはわが党の大統領候補に相応しい」という声がかかるほど、国民的人気のある人物なのだ。
一方、チャン会長のような「パワハラ」に明け暮れる大企業トップも少なくない。「ナッツ姫」「水かけ姫」で有名な大韓航空トップの一家によるパワハラ事件は記憶に新しいだろう。
ドラマの中で、チャン会長は、自身の長男と喧嘩をしたセロイに土下座を命じるシーンが登場するが、現実にはもっとひどいケースがある。
2007年、HグループのK会長は、息子がクラブで喧嘩になり、従業員らに暴行を受けた事実を知って激怒。ただちにボディーガードやヤクザを引き連れ、クラブを襲撃し、鉄パイプで直接、加害者に暴行を振るったのだ。
さらに驚くべきことには、裁判所は1審こそK会長に懲役1年6ヵ月を言い渡したものの、2審では、K会長に執行猶予判決が下され、釈放された。
裁判所は、次のような判決理由を明らかにしている。
「財閥グループの会長である被告に求められる遵法精神などを考慮すると、それに見合った刑事処罰が行われるべき犯罪行為であったことは明らかだ。しかし、父親として子に対する愛情のあまり、物事の判断力を失い、犯行に至ったことを勘案した」
チャン会長の人物像は、そんな絶対的な権力を持つ大企業のトップをめぐる不祥事から、生まれたのかもしれない。
※こちらの記事は、2020年7月12日(日)に公開されたものです。
記事提供:文春オンライン
2020.07.21(火)
文=金 敬哲