「世界灯台100選」に選ばれた 日本最古の洋式石造灯台へ

 周囲2キロ、海抜30メートル、細長い赤銅色の神子元島。

 ダイビングボートが近付くにつれ、輪郭がしっかり見えてくる神子元島灯台は、ダイビング前の興奮とセットになった、この海の象徴です。

 1871年1月1日(明治3年11月11日)に点灯された神子元島灯台は、国際航路標識協会(IALA)による「世界各国の歴史的に特に重要な灯台100選」、通称「世界灯台100選」に選ばれた、日本の5つの灯台のうちのひとつ。

 そして現存する日本最古の洋式石造灯台として、国の史跡に指定されています。

 ぽつんと浮かぶ孤島の神子元島灯台。建設を担当したのは、犬吠埼灯台と同じ英国人のR.H.ブラントン。

 ここも日本の“灯台の父”であるブラントンによるものでした。

 建設当時、潮流が激しい神子元島まで建材の伊豆石を運ぶだけでも大変なのは、想像に難しくありません。

 しかも、伊豆石をつなぐためのセメントが当時はなく、島で石灰岩を焼き、速成のセメントを作ったのだとか。孤島での作業は過酷で、荒れた海に命を落とした職人もいたそうです。

 この灯台は幕末に、欧米列強との間で交わされた江戸条約(改税条約)によって、日本で最初に建設することに決まった8つの洋式灯台のひとつです。

 それまで暗かった伊豆の海に光を灯し、それは近代日本の黎明でもあった、といいます。

 完工の式典には、大久保利通や大隈重信、英国公使ハリー・パークスなど、明治維新における歴史上の人物たちも来島。

 日本の未来を照らす灯台を祝ったそうです。今も現役で神子元島灯台は、光を灯しています。

神子元島

●アクセス 伊豆急下田駅から車で約30分
●おすすめステイ先 季一遊
https://www.tokiichiyu.com/

取材協力/一般社団法人 下田市観光協会
http://www.shimoda-city.info/
海遊社
https://www.290.jp/

古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。
●オフィシャルサイト https://www.chieko-koseki.com/

Column

古関千恵子の世界極楽ビーチ百景

一口でビーチと言っても、タイプはさまざま。この広い世界に同じ風景は一つとして存在しないし、何と言っても地球の7割は海。つまり、その数は無尽蔵ってこと? 今まで津々浦々の海岸を訪れてきたビーチライター・古関千恵子さんが、至福のビーチを厳選してご紹介します!

2020.06.06(土)
文・撮影=古関千恵子