「岡江さんに初めて出演のお願いに行き、ひと通り説明が終わった時です。岡江さんが私に一言、『このサンドイッチ、美味しいよ、食べる?』って勧めてくれた。
その飾らない人柄と親しみやすさを肌で感じた瞬間、『絶対に良い雰囲気の番組を作れる』と確信しました」
そう語るのは、1996年から2014年まで続いた生活情報番組「はなまるマーケット」(TBS系)の“生みの親”、初代プロデューサーの石川眞実(まこと)氏だ。
「はなまるマーケット」は、2020年4月23日(木)に新型コロナウイルスによる肺炎によって惜しまれながら亡くなった女優の岡江久美子さんが、17年半にわたってMCとして出演し続けた人気番組。
石川氏が「文春オンライン」の取材に当時の秘話を打ち明けた。
「天までとどけ」のイメージが決めてだった
石川氏が朝の新番組を担当することが決まり、MCとして真っ先に頭に浮かんだのが岡江さんだったという。
「『はなまるマーケット』を担当するまで、私は音楽番組やバラエティ番組の制作に携わっていました。
あの頃、女優さんがドラマ以外の番組に出演することは少なかったにもかかわらず、岡江さんはバラエティやコント番組にもゲスト出演していた。気取らない人柄で、とても庶民的なイメージもありました。
当時、岡江さんは『天までとどけ』というドラマでもお母さん役で出演されていましたから、お茶の間にも家庭的なイメージが定着していた。ぜひ岡江さんにお願いしたいと思いました」
「天までとどけ」は、1991年から1999年までTBSで放送されたホームドラマだ。
岡江さんは13人の子供を育てる母親役として出演。昼ドラマとしては異例の最高視聴率19%を記録した。
初めて岡江さんと打ち合わせをした日のことを、石川氏は鮮明に記憶していた。
「テレビ朝日の喫茶室で打ち合わせをしました。
岡江さんから『ゴシップを扱ったり、細かい番組進行が必要な司会はできない』と言われていたので、番組進行は薬丸(裕英)さんが中心だし、扱うテーマは生活情報なので、と番組のコンセプトをお伝えしました。
そして『主婦としての疑問や聞いてみたいことを、進行表に関係なく遠慮なく言ってください』と説明し、快く引き受けていただけました。
岡江さんご自身もちょうど40歳という区切りの年だった。何か新しいことをはじめたいと考えていたそうです」
2020.05.18(月)
文=「文春オンライン」特集班