スタート時に「唯一お願いしたこと」

 「はなまるマーケット」がスタートした年、TBSは、坂本堤弁護士がオウム真理教を批判するインタビュー映像を教団幹部に見せた「オウムビデオ問題」によって、ワイドショーが次々打ち切りに追い込まれていた。

 そんな中で、ワイドショーの後番組の制作担当者として白羽の矢が立ったのが石川氏だった。

「スタートさせる時、とにかく時間がなかった。『モーニングEye』という前番組の終了決定が5月の連休明けで、『はなまる』は9月スタートですから約4カ月しかない。

 企画書作成、キャスティング、スタッフ確保などに奔走しました。当時管理部門にいた私に後番組の企画・制作の指名があったのですが、今考えても入社以来一番働いた期間だったと思います」

 当時、会社からは「ワイドショーはやめろ」という指示はなかった、と石川氏はいう。

「会社から言われた後、番組をはじめるにあたっての条件は、生放送であることと、行き過ぎた取材をしないこと。

 それに加え、私は事件事故などの“発生もの”や芸能ネタをやらないこと、『日常の幸せを大切に、明るく楽しく暮らせる』生活情報番組にすることを決めました」

 こうして岡江さんとともに「はなまるマーケット」という番組をスタートした。石川氏は、岡江さんに対してほとんど指示をしなかったというが、「唯一お願いしたこと」があるという。

「岡江さんには、『番組のオープニングで、昨日あったことや最近感じたことを、フリートークで薬丸さんと話してください。時間は短くても長くても構いませんから』とお願いしました。

 番組冒頭の他愛もない会話が視聴者に受け、このオープニングトークは後に好評となりました。

 これまで様々な芸能人の方と仕事をしましたが、岡江さんほどこちらの伝えたいことを素早く理解して表現してくれる方はいないんです。慌て者でおっちょこちょいと思われがちですが、とても聡明な方ですよ」

2020.05.18(月)
文=「文春オンライン」特集班