岩壁にぽっかりと穴が!

 最初に目指したのは、島の南西部の「エンジェルズ・ビラボン」。

 この道がひどい。風雨にさらされて舗装が剥げかけた道は、未舗装の道よりもデコボコが激しい。しかも道幅が狭く、車2台が通り抜けるのがやっとです。その隙間をバイクが無理やり走り抜けるカオスな状況。サンゴが隆起した石灰質の島ゆえ、白い土埃が舞い上がり、道路脇の植物は白かぶりしています。

 農業には不向きな乾燥した土壌で、タピオカの原料キャッサバ芋やトウモロコシの畑をたまに見かける程度。厳しい環境でも育つブーゲンビリアのピンクが、白く煙った島に鮮やかな差し色になっています。

 桟橋から車を走らせること、約1時間。「エンジェルズ・ビラボン」は明るいブルーのインド洋とごつごつした岩のコントラストが美しい岬。小さな拝所がある、聖なる場所でもあります。荒々しい岩に巨大な波がドガーンと打ち寄せ、そのたびに水しぶきがスプレーとなってあたりを濡らします。

 エンジェルズ・ビラボンの近くにある「ブロークン・ビーチ」も、これまた絶景。岩壁で囲まれた小さな入り江で、海との境になった岩壁の一角にぽっかりと穴が開いた地形になっています。

 この島のガイドさんから「ブロークン・ビーチ」にまつわる伝説を聞きました。ざっくりまとめると、昔々、島民は勘違いから気づかないうちに嘘をついてしまい、バツとしてこの穴が生まれ、大量の水が噴き出して島民は全員死んでしまった、というもの。うーん、あまりに理不尽で、合点がいきません。ガイドさんと私の言葉の壁で、話を正しく理解できなかったのか、伝説にありがちな不条理か?

2019.08.24(土)
文・撮影=古関千恵子