使用中の姿は
家族にも見せられないけれど
親にもらった顔をいじるのは……という言い方が未だにあるが、親にもらうのは多分口元。
口元は呼吸をし、ものを食べ、言葉をしゃべる。人間の知性と品性、人間性の全てがそこにそこらから発せられる最も重要な存在の発露。
だから口元を変えると、それこそ親が見ても判らなくなってしまうほど、別人格になってしまうということ、そこまでを肝に銘じて自分の口元と向き合いたい。
そこで考えてみたのは、口元のトレーニング。口元の衰えは、長い時間をかけてじっくり訪れ、その分だけ改善が難しい。
だから日頃よりの、口元アンチエイジングを今から習慣にすべきなのかもしれない。よくいわれるように、「あいうえお」を精一杯大きな口でくっきりはっきり長めにいう、口の体操も毎日ちゃんと続ければ効果的だが、もう少し負荷をかけないと、本気のたるみ防止はできないと考えるなら、ちょっとユニーク過ぎて、家族にも使用中の姿は見せたくないが、口元用のエクササイズ機器を使うのも効果的。
パタカラは、この道のロングセラー。口にくわえたツールを自ら引っ張るというシンプルなもの。
ご存じ話題のベストセラー、パオは、長いウイングを羽のようにパタパタさせる。唇に挟んで収縮運動を行う簡易的なものもあるが、いずれも続ければ口元が引き締まる。
こういうことで見た目の衰えがはるかに軽減されるならばやるべきだ。人間の顔は、やっぱり下半分で衰える。加えて、プチだろうがなかろうが、整形が非常にリスキーなのは、人間の魂が宿った部位ならばこそ。
その口元をいじらずに美しさを全うしたい。
齋藤 薫 (さいとう かおる)
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌で多数の連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『“一生美人”力』(朝日新聞出版)、『されど“男”は愛おしい』(講談社)など、著書多数。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2019.05.27(月)
文=齋藤 薫
撮影=釜谷洋史