世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第202回は、芹澤和美さんが北海道の東側を訪ねました。


心を水面に映す(?)
森のなかの神秘的な湖へ

 雄大な自然とおいしい食事、おおらかでユニークで優しい人たちに惹かれ、20年来、幾度となく訪れているひがし北海道。緑あふれる夏から雪深い冬まで、行くたびに、四季それぞれの風景で迎えてくれる。

 そんなひがし北海道へ直近で旅をしたのは2018年秋。

 同年の9月に起きた北海道胆振東部地震の後の観光復興を応援するための「北海道ふっこう割」を利用して、2泊3日の旅に出た。

 地震直後は全道で一時的に停電があったものの、震源地からはるか遠いエリアには、地震の影響はほぼなかった。

 それにもかかわらず、各地のホテルや観光地で旅行キャンセルが相次ぎ、その数は2週間で94万人にも上ったという。

 そこで生まれたのが「北海道ふっこう割」。北海道好きにとっては、リーズナブルに旅ができて復興支援のお手伝いもできるという、素晴らしいチャンスに恵まれたのだ。

 ひがし北海道とひとくちにいっても、エリアは広い。この旅で選んだのは、釧路空港に入り、帯広空港から出るコース。

 まずは、20年前に訪ねてその美しさに感動したオンネトーへ。

 アイヌ語で「年老いた沼」や「大きな沼」を意味するとおり、約2万年前の雌阿寒岳の噴火によってできた、周囲約2.5キロの湖だ。

 エメラルドグリーンともブルーともいえない、なんとも複雑な色は神秘的。オンネトーは、天候や風向き、見る位置によって湖の色がさまざまに変化することから「五色沼」とも呼ばれている。

 20年前と湖面の色が違って見えたのは、見る人の年齢や心境によっても、変化して目に映るものだからかもしれない。

 オンネトーを後にし、紅葉のなかをドライブしながら立ち寄ったのは、津別町内にある北見相生(きたみあいおい)駅跡。

 北見相生駅は、旧国鉄の相生線の終着駅として1925年(大正14年)に誕生し、1985年(昭和60年)に同線が廃線となるまで存在していた駅。

 現在、周辺は「道の駅あいおい」の一部として整備されている。神秘的な大自然もあれば、こんな趣ある場所がふとしたところにあるのも、ひがし北海道の魅力だ。

 切妻屋根の簡素な木造平屋の駅舎は、古き佳き昭和そのもの。復元されてはいるけれど、廃止された当時の時刻表が掲げられていて、郷愁をかきたてる。

 旧駅舎の隣には、熊の形をしたスイーツ「クマヤキ」で有名な「道の駅あいおい」がある。

 店内に入ってみると、香ばしい香りが。通常は駅舎構内で営業している「駅舎cafe ホロカ」の名物、自家焙煎珈琲の香りだ。ドライブ中は温かなコーヒーが嬉しい。

 ほっとひと息ついたところで、帯広方面へ向けて出発。

2019.03.05(火)
文・撮影=芹澤和美